バグダッド・スキャンダルの映画専門家レビュー一覧

バグダッド・スキャンダル

元国連職員のマイケル・スーサンが自身の体験を基に書き起こしたベストセラー小説を映画化。2002年、困窮するイラク国民を救うはずの国連主導による人道支援計画「石油・食料交換プログラム」の裏で行われていた汚職事件を活写するポリティカル・サスペンス。出演は「ダイバージェント」シリーズのテオ・ジェームズ、「ガンジー」のベン・キングズレー、「2重螺旋の恋人」のジャクリーン・ビセット。監督・脚本は「ストックホルムでワルツを」のペール・フライ。共同脚本を「クライシス・オブ・アメリカ」のダニエル・パインが務める。
  • ライター

    石村加奈

    日本に限らず、世界ではいま、悪事を働き、証拠を突きつけられても、嘘を突き通した方が勝ちの、酷い流れができている。国連を舞台にした本作も然り。では10年以上も前のスキャンダルを、あえていま映画に仕立てた意義に思いを馳せれば、時代の風潮に逆らっても、人間の正義に光をあてたいという、原作者を筆頭に、監督、主演兼プロデューサーを務めたテオ・ジェームズら、制作陣の良心が見えてくる。時に映画は、社会の自浄作用として、観る者に問いかける力を持つと筆者も信じたい。

  • 映像演出、映画評論

    荻野洋一

    対イラク物資援助をめぐる国連職員の汚職事件が、あたかも東映実録路線のごとくノワールに描かれ、「なんだい、国連はやくざなのか?」と呆れる。原作者M・スーサン氏の実体験だという。氏は国連に就職する以前はNY大学で映画を学んでいたとのこと。そこで筆者は邪推する。氏は汚職の現場に立ち会いつつ、将来の映画化を睨んでほくそ笑んだのではないかと。製作予算は本欄「アンクル・ドリュー」の半分以下なのに、世界観の大きさ、確かな演出でははるかに上手だ。

  • 脚本家

    北里宇一郎

    国連スキャンダル。これ、むしろドキュメンタリーの方がふさわしいとも思ったが。新人職員がじわじわ悪事に巻き込まれドツボにはまる。そこが怖い。黒幕が悪玉という感じではなく、尊敬できる父親タイプというところ。その師弟関係の描き方に少し娯楽映画のパターンが匂って。それは主人公に絡むクルド人女性も同様で。どうもこの映画、面白く作りすぎの感が。世間に発表のフェイク写真の落とし前がないのも気になる。とはいえ、演出の切れがよく、題材の興味もあって見応えはあった。

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