新宿パンチの映画専門家レビュー一覧
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映画評論家
北川れい子
綾野剛主演で2作続いた「新宿スワン」の出涸らしの、更に出涸らし。主人公を地方出身、パンチ頭の童貞純情青年に仕立てているが、騒々しいだけのただのチンピラ。スカウトマンになってからのエピソードもうんざりするほどチープで、途中で逃げ出したくなった。演出を言えば、主人公が先輩スカウトマンと延々と殴り合うシーンに往年の西部劇を連想したり、郊外を自転車で走るシーンの長回しにチラッとカンシンしたが、ハナシに身が入らなかったから目立っただけのことで、ハーッ。
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映画文筆系フリーライター、退役映写技師
千浦僚
なにせ間違った撮り方だと思わせるところがワンカットもないのだから、これは世が世なら燦然と輝いたであろう一級のB級的手腕だ。これは一級のA級より難しくかっこいい。「新宿スワン」や園子温と真逆のベクトル。間違ってない撮り方が守りじゃないところにたしかさがある。カット尻の長さ、引きの画がエモい。そこが攻めてる。ただこの監督がキャリアとして今後どうしたらいいのかわからないところが世の不幸。構造的にしっかりした脚本(永森裕二)も素晴らしい。今年ベスト10位。
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映画評論家
松崎健夫
城定秀夫監督は「新宿区歌舞伎町保育園」(09)でも新宿を舞台に保育園を起業するホストの姿を描いていたが、本作ではホストの“あがり”の仕組みを知るというハウツー的な側面も持っている。残念ながら同様の題材を扱った先陣「新宿スワン」(15)に規模では負けるが、ロケを多用した街の描写は互角か、それ以上の印象。例えば「純平、考え直せ」(18)などと同じように、平成最後の“新宿歌舞伎町”の姿を記録していることは、経年化することで更なる意味を持つのではないか。
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