誰がために憲法はあるの映画専門家レビュー一覧

誰がために憲法はある

芸人・松元ヒロによる一人語り『憲法くん』をモチーフに制作されたドキュメンタリー。名優・渡辺美佐子が同作を新たに演じるほか、渡辺が中心となり33年間、続けられてきた原爆朗読劇に出演した女優たちが未来へ託す思いを語り、日本国憲法の原点を見つめ直す。出演は「果しなき欲望」の渡辺美佐子、「あいつと私」の高田敏江、「おもひでぽろぽろ」の寺田路恵、「黒部の太陽」の日色ともゑ。監督は「大地を受け継ぐ」の井上淳一。
  • 映画評論家

    北川れい子

    恥ずかしながら、お笑い芸人・松元ヒロの「憲法くん」をこの作品で初めて知った。ベテランの女優たちによる原爆の朗読劇公演も今回が初めて。どちらもことば、つまり肉声によるダイレクトな憲法擁護、戦争反対のメッセージが込められていて、観ているときは心に強く響く。でもことばは次のことばに流される傾向がある。ことばから生まれたイメージは次のことばに流され、ことばばかりが押し合い、圧し合い。それとやはり松元ヒロ本人に「憲法くん」を語ってほしかった。

  • 映画文筆系フリーライター、退役映写技師

    千浦僚

    私自身は護憲派。カジュアルに。本作主旨に賛同。ナチュラルに。大東亜戦争と称した戦争での敗北がどれだけ日本にとってデカかったか。それを体験したひとたちの皮膚感覚を通してそのことを追体験することが旧作日本映画を観ることには含まれる。それを長年積み重ねてきたためにいまの日本国憲法に価値を認めてきた。渡辺美佐子はじめ本作に登場する方々の活動を風化に抗う闘いだと思った。日色ともゑが語る宇野重吉の判断基準“そこに正義があるかどうか”、には感銘を受けた。

  • 映画評論家

    松崎健夫

    憲法を擬人化した「憲法くん」(18)。ドキュメンタリーを添えることで、短篇を長篇にするアイディアは、興行のありかたにも一石を投じている。「確かに、私にはアメリカの血が流れています」あるいは「私がリストラされるかも?」という台詞は、ユーモアをもって世相を斬ってみせているだけでなく、反対意見に対する牽制をも実践している点が秀逸。時が過ぎ、記憶が薄れ、年号も替わり、忘れ去られてしまうことへの危惧。いつしかこのユーモアさえも通じなくなることへ不安を覚える。

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