ヘレディタリー/継承の映画専門家レビュー一覧
ヘレディタリー/継承
サンダンス映画祭で発表されて以降、海外メディアで称賛されている新鋭アリ・アスター監督によるホラー。祖母エレンが亡くなり、喪失感を乗り越えようとするグラハム家に、不思議な光が部屋を走る、誰かの話し声がするといった奇妙な出来事が頻発し始め……。出演は「500ページの夢の束」のトニ・コレット、「母の残像」のガブリエル・バーン、「ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル」のアレックス・ウォルフ、「コンプライアンス 服従の心理」のアン・ダウド。撮影監督は「トラジディ・ガールズ」のパヴェウ・ポゴジェルスキ。音楽をサックス奏者のコリン・ステットソンが務める。
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翻訳家
篠儀直子
屋敷のなかで怪現象が続発するホラー映画かと思ったら、家族の心理のもつれを覗きこむかのような、これまたサイコスリラーの趣き。終盤の展開をどう見るかで評価が分かれそうだが、何が事実かわからなくなっていく中盤の展開が面白く、ドールハウスのイメージが強調されるのも、エンドロールにあの曲が流れるのも、たぶんそういうことなのだろう。どの画面にも異様な吸引力があり、奥行きを強調した構図の魅力を生かすべく、(シネスコではなく)ビスタの画面を選択しているのも賢明。
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映画監督
内藤誠
ハリウッドのジャンル映画かと思って見ていると、新人監督アリ・アスターのホラーの語りくちは調子がちがう。美術デザインはデリケートにできているのだけれど、カメラの位置が不安定で落ち着かない。それは、崩壊していく家族の気持ちを表現するのにはマッチしているので、不幸な家族を描く私小説の映画化だと考えたほうがいいかもしれない。監督自身、自分の一家の出来事をホラーに仕立てたと言っているのだから、その狙いが作品内容を分裂させて、混乱を招いたのかもしれない。
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ライター
平田裕介
家族を襲った悲劇を再現したミニチュアとドール・ハウス、街で擦れ違ったら思わず振り返ってしまいそうな娘役ミリー・シャピロの独特すぎる風貌、なんだか虫唾の走る音楽と、ストーリーうんぬんの前にそちらに震えてしまうタイプのホラー。雰囲気だけと言ってしまえばそれまでだが、イヤ~な感じは観終わった後もしばらく抜けない。だが、最も刺さったのは、ある事件を契機に壊れていく家族の姿だったりする。顔など合わせたくないのに離れられない、家族のしがらみが辛くて怖い。
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