サスペリア(2018)の映画専門家レビュー一覧

サスペリア(2018)

1977年の同名ホラー映画を「君の名前で僕を呼んで」のL・グァダニーノがリメイク。1977年、ベルリンの名門舞踊団に入団したスージーは、振付師マダム・ブランから大事な公演のセンターに抜擢される。だが、彼女の周りで不可解なことが起こり始める。出演は、「フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ」シリーズのダコタ・ジョンソン、「胸騒ぎのシチリア」のティルダ・スウィントン、「ニンフォマニアック」シリーズのミア・ゴス、「サスペリア(1977年版)」のジェシカ・ハーパー、「キック・アス」シリーズのクロエ・グレース・モレッツ。音楽は、レディオヘッドのトム・ヨーク。
  • 翻訳家

    篠儀直子

    怖さではなく異常心理を経験させる映画。常軌を逸したカットつなぎが連打され、しかもカット尻が全部少しずつ短い感じがあって、それだけでまず観る側の神経をおかしくする趣向。一方、題材への思い入れはわかるけど、この内容でこの上映時間は長すぎるし、70年代後半のベルリンの特殊性と話の本筋もいまいち上手くかみ合わない。ダンスの振付けが本格的で見ごたえあり。「母はあらゆる者の代わりになれるが何者も母の代わりにはなれない」って、3役を怪演するティルダ様のことかな?

  • 映画監督

    内藤誠

    知的で妖しいティルダ・スウィントン指導の舞踊団に憧れてダコタ・ジョンソンがアメリカからベルリンへやってくる。バーダー=マインホフのテロの時代で、ダンサー失踪事件やホロコーストの傷痕、指導者が魔女たちではないかという恐怖など、舞踊はみごとながら物語は錯綜する。アルジェントの映画を敬愛して、リメイクしたらしいが、グァダニーノ作品はアート的なアンダーグラウンド劇風で、赤い紐を裸体に巻いたダンサーたちの群舞を見ても、エロチックというよりはグロテスク美だ。

  • ライター

    平田裕介

    オリジナルより53分も長いことに一抹の不安を抱いたが、そこに意味がある。舞踊団が乙女たちを取り込んでいき、混乱した果てに崩壊へと突き進むさまを、“ドイツの秋”を巻き起こしていたバーダー=マインホフと重ねてじっくりと描き、それがナチスやホロコーストにまで及ばせる。別にそこまで深くしなくてもいいかとも思うが、重厚で鬱蒼とした画作りも相まって引き込まれる。ダンス映画としても秀逸で発表会の演舞シーンは圧倒的、それでいて終盤のゴア描写も手抜き無しでお見事。

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