宵闇真珠の映画専門家レビュー一覧
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批評家、映像作家
金子遊
高層ビルがひしめき、きらびやかなネオンに彩られる摩天楼のイメージが強い香港。それはクリストファー・ドイルが撮影した「欲望の翼」や「恋する惑星」によって多少は形成されているのかもしれないが、実際の香港は、九龍半島と200以上の島々がある多島海だ。香港島は山がちで登山が盛んだし、本作の舞台となったランタオ島の大澳は、水上家屋や水路が残る静かな漁村。90年代のアジア映画を想起させるドイルの美しい映像を眺めていると、知られざる香港の片田舎を旅したくなる。
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映画評論家
きさらぎ尚
監督や俳優と並び、撮影監督としてその名前が話題になるC・ドイル。先進的でスタイリッシュな映像センスのドイルが脚本・撮影・監督に携わっているだけに映像詩を見ているよう。奇病で昼間は自由に外出できない設定のヒロイン。幽霊が出ると噂される廃屋。こうした夢幻的なしつらえがストーリーに勝っているので、もどかしさは否めない。だが真珠の母貝アコヤガイは混入した異物を核に真珠層を巻く。それを思えば、旅人(異物)オダギリジョーを核にしたこの映像詩、情趣がある。
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映画系文筆業
奈々村久生
いまおかしんじ監督が「おんなの河童」(11)を撮ったとき、カメラマンをつとめたクリストファー・ドイルに、撮影現場で会ったことがある。海辺のロケ地でのドイルは誰よりも勢力的に動き回り、パワフルに現場をリードしていた。そのとき同行していた女性が本作の共同監督ジェニー・シュン……ではなかった気もするが、世界中を自由に飛び回る異邦人である彼が、自らの監督作にアイデンティティにまつわるテーマを選んだのが興味深い。それは詩のようなドイル節のきいた世界だった。
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