いつか家族にの映画専門家レビュー一覧

いつか家族に

中国の作家、余華原作『血を売る男』の舞台を韓国に移して映画化。朝鮮戦争後、現場仕事で生計を立てるサムグァンは、ポップコーン売りのオンナンに一目惚れし、結婚する。3人の子宝に恵まれ幸せに暮らしていたが、長男が他人の子ではないかと噂が流れ……。監督・主演は、「1987、ある闘いの真実」のハ・ジョンウ、「マンハント」のハ・ジウォン、「お嬢さん」のチョ・ジヌン、ドラマ『コーヒープリンス1号店』のユン・ウネ。第17回ハワイ国際映画祭スプリングショーケース出品、第26回フィレンツェ韓国映画祭出品、第8回沖縄国際映画祭特別招待作品。
  • ライター

    石村加奈

    もっとシリアスな作品かと思いきや、意外とコミカルな展開に戸惑いつつ(特にハワイアン風音楽が流れる中、一家団欒で肉まんを頬張るラストシーンにはのけぞった)、ハ・ジョンウ演じる主人公の不器用さというよりは、幼稚さに苛々しながら観ていた。それでも子供の命を助けようと自分の血を売る親の、普遍的な愛情を目の当たりにすると、涙腺が緩んでしまうのはなぜか? と自問自答すれば、それは間違いなく近親憎悪である。時代は違えど、愚かな小市民のしょぼい愛に泣かされた。

  • 映像演出、映画評論

    荻野洋一

    父と母、幼い子どもたちのファミリーメロドラマだが、真の主人公は街だ。朝鮮戦争後の貧しい韓国中部の地方都市が生々しくその相貌を甦らせる。道路はガタガタ、バラックの家々はろくに戸締まりもしていない。なかんずく印象深いのは、父親役のハ・ジョンウが家計のピンチになると血を売りに行く「平和医院」で、医院にはいつも血売りの行列ができている。大島?「太陽の墓場」(60)をつい思い出す。ガラス瓶に血液が貯まっていくジョロジョロという音が切ない。

  • 脚本家

    北里宇一郎

    自分の息子が誰の種かをめぐって、町中が大騒ぎ。なんていう前半部は陽気なイタリア喜劇の如し。まま子いじめの件りは、ちと陰湿。父親が重病の息子を助けようと、売血を重ねる――という辺りから、これでもかの涙と感動の洪水となって。その種の趣向が苦手なこちらは、もう勘弁してと手を合わせるばかり。なんだか昔々日本で大流行の母物映画を思い出す。とはいえ、主演も兼ねたハ・ジョンウの演出が意外としっかりしており、いやだいやだと思いつつ、けっこう最後まで引っ張られた。

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