家族にサルーテ!イスキア島は大騒動の映画専門家レビュー一覧
家族にサルーテ!イスキア島は大騒動
「幸せのちから」のガブリエレ・ムッチーノ監督によるイタリアン・コメディー。ピエトロ&アルバ夫妻の金婚式を祝うため、イスキア島にやって来た19人の親戚一同。食事会もお開きとなる頃、天候不良でフェリーが欠航、二晩を同じ屋根の下で過ごすことになる。出演は「はじまりは5つ星ホテルから」のステファノ・アコルシ、「カプチーノはお熱いうちに」のカロリーナ・クレシェンティーニ、「修道士は沈黙する」のピエルフランチェスコ・ファヴィーノ、「暗殺の森」のステファニア・サンドレッリ、「題名のない子守唄」のクラウディア・ジェリーニ、「8 1/2」のサンドラ・ミーロ。
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批評家、映像作家
金子遊
子供の頃、祖父母の家に親戚一同が集合する新年会が好きだった。世代の異なる人が集まり、酒で酔いがまわると隠されていた欲望や不満があらわになり、大人たちが醜聞をくり広げるから。本作では、イタリアの離島に祖父母の金婚式のために大家族が集まる。認知症、倦怠期の夫婦、腹違いの子、不倫、初恋、仕事の妬みなど、家族や親戚内で起こるあらゆる問題や確執が噴きだす。監督はそれを滑らかに移動撮影し、群像劇として、複雑で解きほぐせなくなった人生や関係性を見せてくれる。
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映画評論家
きさらぎ尚
一見、問題がなさそうな家族もひと皮めくれば。こんな当たり前の、それも浮気や介護や借金と、一般人には身近なことばかりを、会話の応酬で展開するこのドラマは、島全体を舞台装置に使った一幕ものの舞台劇のようだ。不満や怒りを爆発させる感情のぶつけ合いは、まるで爆竹の連続破裂音。G・ムッチーノは登場人物に主役・脇役の序列をつけず全員をフラットに描き、かつ相関関係をはっきり解らせる。その技量が素晴らしい。加えて、味わい深い俳優の演技が話を面白くした。
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映画系文筆業
奈々村久生
あるシチュエイションで集まった家族の暴露劇はもはや一つのジャンルだ。悲劇でも喜劇でも、あるいはその両方でも。そこで差別化を決定づけるのはイタリアというお国柄にほかならない。ただでさえ言葉数が多くダイナミックで攻撃的にも聞こえるイタリア語のセリフの応酬はそれだけでパワフル。家族という奇妙な関係が孕む修羅場の普遍性と、その発露の仕方に表われる決定的な違いが面白い。イスキア島の美しくもワイルドなロケーションと同様、その場にいるより見るほうが眼福かも。
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