MOST BEAUTIFUL ISLAND モースト・ビューティフル・アイランドの映画専門家レビュー一覧
MOST BEAUTIFUL ISLAND モースト・ビューティフル・アイランド
スペイン出身の女優アナ・アセンシオが実体験を基に監督・主演し、SXSW映画祭2017で審査員大賞を受賞したスリラー。ニューヨークの街で生活苦に喘ぐ不法移民のルシアーナは、秘密のパーティーに参加するだけで高額報酬が得られるバイトを紹介される。スーパー16で撮影され、ニューヨークの闇に堕ちていく不法移民の女性の不安をドキュメンタリータッチのカメラワークで描き出していく。劇場公開に先駆け、第14回ラテンビート映画祭にて上映。
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ライター
石村加奈
可能性をつかみに来た昔と可能性に疲れた今、歪んだ欲望を金で満たすセレブと恐怖に怯えて直立する不法移民、最も美しい島と人間の尊厳を貶めるアンダーグラウンド……。大都会ニューヨークの、単純すぎる対立構造が重ねられるが、真の闇は地下ではなく、バスタブにゴキブリが侵入しても呆然としたままの主人公の日常にあるのでは? 冒頭で主人公が故郷に帰れぬ深刻な事情が明かされるが、命の代償に得た金で彼女が買ったものの儚さ(生意気な子供の顔がちらつくとはいえ)に震撼。
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映像演出、映画評論
荻野洋一
NY秘密クラブの恐怖の一夜に、「アイズ・ワイド・シャット」(99)を思い出さない映画ファンはいないだろう。キューブリックの遺作をもっとミニマルに切り詰め、監督自ら演じる移民女性の視点だけが世界のすべてとなる。この視点の狭まりは一定の成果を得ていると思う。欲を言えば、シチュエーションだけでなく背景をもっと強めに出してもよかった。どうやら彼女は母国で我が子を失った悲運を持つことが匂わされる。この背景をもっと物語に絡ませたかった。
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脚本家
北里宇一郎
米国で不法移民として生きる。そのギリギリの暮らしが生の実感で描かれて。1ドル、1セントをどう稼ぐか。食べるためには何でもしなければ。見ていて息苦しくなる。その果てに地下世界に辿り着いた。怖い。飾り気のない、ドキュメンタルなタッチがここで効いてくる。スペイン出身の女優が自ら監督。これは私にしか描けないという覚悟の一作。けど、だったらもっとの欲も出て。この先また金に困って、あそこに戻って溺れての人間のもがきを。起承転結の承で終わった食い足りなさが。
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