笑顔の向こうにの映画専門家レビュー一覧
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映画評論家
北川れい子
製作は日本歯科医師会。が、この作品、いったい何を描きたかったのか。新人の歯科衛生士がデンタルクリニックに初出勤するシーンからスタートするが、入り口は間違えるし、院長やスタッフとも初対面らしく、いったいどんなツテで就職したの?しかも話は若手歯科技工士とその父親との技術を巡る確執に移行、そうか、技工士たちはこんなに頑張ってますよってワケか。?みあわせの悪い義歯を巡る患者のエピソードも凡庸で、とにかくとりとめがない。業界絡みの青春映画としてナットク。
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映画文筆系フリーライター、退役映写技師
千浦僚
ある独自の技術や職能を描く業界もの映画はまず撮るネタが自然とそこにあり、それはそもそも映画となる必然を持っていて、映画として成立しうる道理。歯科技工士の役をやってもその清潔感から観る者に拒否反応を起こさせない高杉真宙が爽やかに懸命にやりきる。彼に関わる年配者、先輩格のキャラクターが皆良い。厚みが出た。特にロマンポルノにも出ていた丹古母鬼馬二、日活ニューアクションのヒロインだった松原智恵子は円熟の存在感。あれ、遡行すれば本作は日活青春ものか。
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映画評論家
松崎健夫
人間関係の些細なズレは、歯の?み合わせの微妙なバランスにも似ている。それは、人間関係における摩擦が和解を導くように、歯も心も次第に“カド”が取れてゆくからだ。また、?み合わせが人によって異なることは、人の“個性”を描こうとしているようにも見える。歯科を主たる舞台にした映画は数少なく、珍しい題材である。但し、エンドロールの最後が監督名ではなく歯科医師会のクレジットであることの是非は問いたい。映画は誰のものなのか、そして誰に向けて作られているのか。
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