M/村西とおる狂熱の日々の映画専門家レビュー一覧
M/村西とおる狂熱の日々
“AVの帝王”村西とおるの本質に迫るドキュメンタリー。1996年夏。借金50億からの再起を目指す村西は、北海道で世界初の4時間超のVシネマと35本のヘアヌードビデオの撮影を敢行。そのメイキング映像と現在のコメントから、村西の実像が明らかに。村西本人に加え、「全裸監督」の原作者・本橋信宏、玉袋筋太郎、西原理恵子、宮台真司、片岡鶴太郎といった著名人も登場。
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フリーライター
須永貴子
本篇の約7割を占めるアダルトDVDのメイキング映像には、準備不足なのに見切り発車した先の地獄絵図が赤裸々に映し出されている。トラブルシューティングがすべて村西監督の応酬話法、しかも言行不一致のため、現場に不満が蓄積していく。この舞台裏の記録は、AVやこの人物に関心がなくても、集団で仕事をする人には有益かも。本人インタビューで語られる、そんな状況でも心が折れない理由は“ザ・人間”という清々しさ。絶対に一緒に仕事をしたくない人だけど。
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脚本家、プロデューサー、大阪芸術大学教授
山田耕大
ゴジラが出現したちょうど30年後の84年、村西とおるがAV監督として世に躍り出てきた。モンスターだった。ロマンポルノをやっていた我々は彼の一撃で粉々に吹っ飛んだ。が、バブル崩壊と共に村西は消え、日本は多くのものを失い、その代わりに妙な言葉が定着していった。コンプライアンス、ガバナンス、ハラスメント、そして英語に訳しようもない忖度。つまらない世の中になった。その村西が蘇りつつあるという。この映画はその予告と思いたい。やがて哀しきモンスターに幸あれ!
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映画評論家
吉田広明
「全裸監督」で描かれた絶頂期以後の村西の映像だが、ドラマのヒットにあやかっての蔵出し感は否めないし、その題材である、借金五十億からの再起をかけたVシネと三十数本のAV同時撮影の現場もトラブル続きでまともに機能している気はしないしで、見始めてしばらくは辛いのだが、やはり役者のイメージが支配的な「全裸監督」よりも本人の固有性がもろに出ているドキュメンタリーでの村西のキャラは確かに蠱惑的であり、ついつい見入ってしまうことになる。
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