あまのがわの映画専門家レビュー一覧
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評論家
上野昻志
福地桃子扮する高校生が、受験勉強第一で、好きな太鼓を禁じる母親によって心を閉ざしていくという過程が、表現として、いまひとつ弱い。ただ、OriHimeという実在するロボットを使ったところに新味がある。確かに、対人関係に困難を抱える者にとって、相手がモノならば、心のバリアーを解くことができるかもしれない。ただし、それが船中で取り違えた袋に入っていたことに、なんの疑問も持たないようなのは、気になる。「洗骨」が沖縄の離島、こちらは屋久島と、救いは南方にありか?
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映画評論家
上島春彦
日本の伝統楽器和太鼓とロボット工学の組み合わせ。この奇想は抜群なのだが脚本が弱く、段取りになってしまった観。傷ついた子供が屋久島にたどり着くまでが重要なのに何かおざなり。ただし、島を流れる川の有名な水の溜まりに少女が浮かぶ画面などヴィジュアルは見事なものだ。親友の自殺を抑圧的な母親のせいで救えなかった、という挿話が重すぎたのか。もっとさりげなくていいのでは。間違えてロボットを持ち帰ったのに何のリアクションもないし。普通は警察に届けると思うのだ。
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映画評論家
吉田伊知郎
テーマと設定が先行して、演技や描写にかなりの歪さが生じて違和感が漂い続ける。ヒロインが太鼓好きだと言ってしまえばそれで済むわけではなく、継続した描写の中で厚みを出してくれなければ困る。ヒロインが母から太鼓を禁じられたのを苦にするほど太鼓好きには見えず。それゆえドローンを用いたギターと太鼓の競演も盛り上がるよりも強烈な異物感。ヒロインのひたむきさは悪くないが周囲の配役や台詞には首を傾げることが多く、殊に男優は誰も彼もが胡散臭い雰囲気を醸し出す。
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