パピヨン(2017)の映画専門家レビュー一覧

パピヨン(2017)

スティーブ・マックイーン主演による「パピヨン(1973)」をリメイク。無実の罪で終身刑を言い渡され、周囲を海に囲まれた孤島に送り込まれたパピヨン。自由を求め何度も脱獄を試みる彼は、志を同じくする紙幣偽造の天才ドガと出会い、奇妙な友情で結ばれてゆく。出演は「キング・アーサー」のチャーリー・ハナム、「ボヘミアン・ラプソディ」のラミ・マレック、「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー リミックス」のトミー・フラナガン、「ブリッジ・オブ・スパイ」のイヴ・ヒューソン。監督は、第31回東京国際映画祭コンペティション部門出品の『氷の季節』で審査委員特別賞と最優秀男優賞を受賞したデンマークの新鋭マイケル・ノアー。本作は、アンリ・シャリエールの壮絶な実体験を基にした自伝小説と、ダルトン・トランボによるオリジナル脚本の両方をベースに「プリズナーズ」のアーロン・グジコウスキが脚本を執筆、73年版にはなかったパリでのエピソードも追加されている。
  • 批評家、映像作家

    金子遊

    映画の製作者たちは、なぜ名作のリメイクを思いつくのか。前作から時間を経て、別の視点でつくれると思うのか。デジタル時代の撮影や編集で、よりリアルに戦前の仏領ギニアを描けると思ったのか。ならば、フランス語映画にしても良かったが。本作の成功の理由は、監督が前作のことを考えず、原作小説から映画を再創造したからだろう。さらに植民地での強制労働や脱獄が、独房や悪魔の島が、すべて実話だという事前の了解があるおかげで、観る者の実存に迫ってくるものがあるのだ。

  • 映画評論家

    きさらぎ尚

    まずは監督、主演の二人の勇気を讃えたい。リメイクはオリジナルと比較されるうえ、オリジナルを超えた、もしくは匹敵するケースは稀。だがこれは稀なケース。第一の要因はオリジナルにはなかったパリの話を加えることで、冒頭でパピヨンへの理不尽な濡れ衣を強調。それによってリメイクは新たな視点を持ち、結果、脱獄そのものが焦点だったオリジナルとは違い、第二の要因としてパピヨンとドガの人間性を軸にした新たな脱獄映画に。隙のない演出と俳優の実力があってこそだ。

  • 映画系文筆業

    奈々村久生

    敢えて極上のエンタテインメントと言いたい。観ているこちらが諦めたくなるような途方もない挑戦を繰り返す男たちの闘いに、アクションと心理スリラーの両面から迫る、手に汗握る脱獄劇。しかもこのリメイク版を支えるのは、美談でも英雄譚でもなく、ただただここから抜け出したいという狂気じみた飽くなき本能的欲求。これがエンタメでなくて何だろうか。チャーリー・ハナムとラミ・マレックの、『BANANA FISH』のアッシュと英二みたいなBL感を匂わせる関係もたまらない。

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