WALKING MANの映画専門家レビュー一覧
WALKING MAN
人気ラッパーのANARCHYが初監督を務めた半自伝的な青春音楽ドラマ。川崎の工業地帯。貧しい母子家庭に育った佐巻アトムは、不用品回収のアルバイトで生計を立てていた。厳しい生活の中、ラップとの出会いをきっかけに、アトムは夢に向かって歩き出す。出演は「純平、考え直せ」の野村周平、「GOZEN-純恋の剣-」の優希美青。
-
映画評論家
川口敦子
♪黒い雨降る工業地帯♪川崎の切り取り方、撮影芦澤明子の底力が光る。その町のどん底の日々、這い上がりたい心、届かせたい叫び――いってしまえば相変わらずな青春、何者かをめざすひとりより、それを取り巻く周縁の人々の纏った闇に目が向く。石橋蓮司! ラップバトルの金髪女子が咆える♪いつまでストリートつらいっていってんだ♪がつきつける客観! 等々、興味深いパーツは少なくないのにそれを繋ぐ関節(脚本、演出、主演も?)が弛緩している印象を拭えず残念。
-
編集者、ライター
佐野亨
若者の自己実現をテーマにしたありがちな物語と思いきや、人物造形にも演技にも、川崎という舞台の切り取り方にも、どっしりと重たい当事者性が宿り、「自己責任」を押しつける社会やマイノリティ差別に対する行き場のない怒りが観る者に自然と伝播、後半に向けてグッと拳が固くなる感触があった。あまり効果的でないスプリットスクリーンやスローモーションの使い方は再考の余地ありだが、これが第1回作品というANARCHY、明らかに映画に愛されている。第2章が待ちどおしい。
-
詩人、映画監督
福間健二
ANARCHY監督、そのラップの魅力の一面はおっさん的率直さで「普通」の足場に立つところだと思う。ここではそれが不発。野村周平の主人公は吃音気味で思いをちゃんと表現できない。その殻をどう破るか。下流の極貧だからといってこんなに痛快さなしでいいはずがない。家族や同僚はいてもコミュニティーのない空間と、あとはヤバい繁華街。いまの現実の底辺はこうだとするには、ちゃちなフィクションに頼りすぎで、外国人をおいても不自然に狭い。ラップのバトルもおとなしかった。
1 -
3件表示/全3件