マイ・ブックショップの映画専門家レビュー一覧
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ブッカー賞受賞作家ペネロピ・フィッツジェラルドの小説をイザベル・コイシェが映画化。1959 年のイギリス。未亡人のフローレンスが、保守的な町に初めての書店を開業。だが、彼女を快く思わない地元の有力者ガマート夫人が、書店の閉鎖を画策していた。出演は「メリー・ポピンズ リターンズ」のエミリー・モーティマー、「人生はシネマティック!」のビル・ナイ、「しあわせへのまわり道」のパトリシア・クラークソン。
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批評家、映像作家
金子遊
イギリス映画が苦手なのは、必ず主人公の前に田舎の保守的な空気が立ちはだかるからだ。これまでの人生、どれだけ保守派や伝統主義を名乗る人たちのせいで、迷惑をこうむってきたことか。彼らは立派な御託をならべるが、結局のところ本作に登場するガマート夫人のように、他人が自由に楽しく生きることを邪魔したいだけなのだ。若いときは「さまざまな考え方の異なる人とも交流して……」と考えたが、残りの人生の方が短くなった現在では、保守的な人間とつき合っているヒマなどない。
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映画評論家
きさらぎ尚
保守的な田舎に他所者が本屋を開店しても、必ずしも周囲の賛同が得られない。それを承知の上で実行するヒロインの勇気と努力に監督コイシェの気質が重なる。劇中に登場する原作にない本『火星年代記』『たんぽぽのお酒』には彼女のこだわりも。特に読書が禁止されて本が燃やされる『華氏451』。トリュフォーによる映画に主演したジュリー・クリスティが今回ナレーション!? さらに映画の仰天の結末は、勇気のバトンの継承と理解した。力強く、本好きにはたまらなく愛しい映画。
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映画系文筆業
奈々村久生
海沿いの田舎町は風が強く、空模様は常に曇りがち。ドラマは終始不穏な気配に支配される。本好きのヒロインを演じたエミリー・モーティマーは自分の好きなものややりたいことは正しいと信じて疑わない(実際それが間違っているとは言えないゆえに厄介な)潔癖さを絶妙に醸し出し、そういう頑なな姿勢がある種の人たちの反感を招くだろうなと思わせるところがリアル。一つのシーン内で同ロケーション、同アングルのショットがもたつくくだりも多く、映像としてはやや辛いところも。
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