ガルヴェストンの映画専門家レビュー一覧

ガルヴェストン

ニック・ピゾラットの犯罪小説『逃亡のガルヴェストン』を「マレフィセント」のエル・ファニング、「インフェルノ」のベン・フォスター主演で映画化。病に冒された殺し屋ロイは、彼を切り捨てた組織に反旗を翻し、傷ついた娼婦ロッキーを連れて逃避行に出る。監督は、「イングロリアス・バスターズ」などに出演する女優メラニー・ロラン。出演は、ドラマ『リバーデイル』のリリ・ラインハート、「それでも夜は明ける」のアデペロ・オデュイエ、「ファミリー・ツリー」のボー・ブリッジス。
  • 翻訳家

    篠儀直子

    アウトローと「聖なる娼婦」の物語、または、死を直視した悪人が善行に目覚める物語の類型に属するストーリーだが、主演ふたりの身体と表情を的確にとらえる演出と、ロケ地の風土を空気ごとつかみ取っているかのような映像により、類似作品とは一線を画す、独特の情感あふれる作品に。犯罪映画らしからぬ音楽の選択も正解。「女性ならでは」とか「ヨーロッパ人ならでは」とかあまり言いたくないのだけれど、メラニー・ロランのセンスがはっきりと打ち出された映画なのは間違いない。

  • 映画監督

    内藤誠

    アメリカの犯罪小説を原作にしたジャンル映画。ベン・フォスターとエル・ファニング主演のロードムーヴィーでもあるのに、「俺たちに明日はない」とは全く感触がちがう。演出がメラニー・ロランでフランス的映像感覚と暗さが全篇に漂い、フィルムノワールの娯楽性を楽しむというよりはアート系作品の感じ。不治の病ではなかったのに、ベンが終始、酒とタバコを口にしながら、咳こんでいるのも、暗い要因だ。キメのこまかい演出や演技、編集もいいので、カルトなファンにはお薦め。

  • ライター

    平田裕介

    舞台は88年の米国。人によって違うと思うが、自分的には同国が同国らしかったギリギリの頃だと思っている。で、映し出されるのはアメリカ原風景を存分に感じさせるモーテル、ダイナー、バー、国道といったものばかり。というわけで、ウィリアム・エグルストンやスティーヴン・ショアの写真集を眺めているような94分。主人公の病をめぐる皮肉なオチや意外と現実的な逃避行の収束など、爽快感がまったくないのもなんだか染みる。ただ、ベン・フォスターは80年代を生きる男に見えず。

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