決算!忠臣蔵の映画専門家レビュー一覧
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ライター
須永貴子
監督の求心力には脱帽するが、オールスターキャストが逆に裏目に出た印象。忠臣蔵に詳しくない自分は、見知った顔が多い分すべてのキャラクターが重要人物に見えてしまって情報処理が追いつかず、かなり早い段階でストーリーに置いてきぼりに。300年前のお話と、今を生きる我々を、お金(数字)で結びつけた結果、仇討ちへの想いや決意が矮小化されてしまった。限られた予算内で仇討ちを行うための作戦会議のシーンの映像は、時代劇としては面白い試みではあるけれど。
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脚本家、プロデューサー
山田耕大
僕が業界に入って間もなくの頃、脚本の大御所、笠原和夫先生にこんなお言葉を頂いた。「『忠臣蔵』を読みなさい。あれには映画のすべてが入っている」。その金字塔の『忠臣蔵』がいま映画になり、経済という新しい視点で描き直している。若い人で、『忠臣蔵』を知る人はほとんどいないが、映画は豪華な俳優陣を配し、コメディタッチでいつの間にか進んでいく。僕が何度も本で読み、映画で観た「忠臣蔵」の旨味は出てこない。そのままの「忠臣蔵」を観たかった、とつい思ってしまった。
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映画評論家
吉田広明
赤穂浪士討ち入りにはいくらお金がかかったのか。一見面白い視点だが、数字が乱打されるうち次第にそれがどうしたという気になってくる。本作の新味は、マッチョにいきり立つ表の武士と、冷徹に勘定する裏の武士(その代表が大石=堤と、幼馴染の岡村)の間の、画然たる階級差、格差、それでも何とか表を立ててやりたいという葛藤だったはず。しかしそれは薄っぺらいまま掘り下げられず、結局討ち入りを裏=経済から見たというTVの歴史番組程度の話に落ちている。
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