小さな恋のうたの映画専門家レビュー一覧
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映画評論家
北川れい子
高校生バンドの映画はすでに何度も作られているし、ヒット曲をモチーフにした青春ラブストーリーも珍しくない。その両方を取り込んだこの作品は、舞台が沖縄だけにその特殊性にも触れているのだが、その触れ方が何とも時代錯誤的で、いつの時代の話? 米軍基地の少女とフェンス越しの交流。少女はいつも独りぽっちで、親からは厳しく交流を禁じられていて。いや、そもそもバンド仲間をアッサリ死なせる脚本からして無神経で、地元の人々のデモのおざなり的扱いも気になる。
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映画文筆系フリーライター、退役映写技師
千浦僚
今年観たなかで一番ヤバい、悪いものを秘めた映画だった。始まったときにはかの東映の栄えある“沖縄映画”「日本女侠伝激斗ひめゆり岬」「沖縄やくざ戦争」「ドーベルマン刑事」に連なるものになるかとも思えたのに、反米軍基地抗議を疎ましいもののように描くあたりから妙な感じが並走しだす。ほらあなたにとって大事な人ほどすぐそばにいるの、の“大事な人”が米軍人の娘(主人公らの友人)とは……難しい。エンドクレジットのオリジナル歌唱でなんとか気を取り直した。
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映画評論家
松崎健夫
今はもう“この世にいない誰か”のことを想い、思い出を語り始めると「つらかったね」とか「大変だったね」と、相手に気を遣わせてしまうことがある。そうなると次第に“この世にいない誰か”のことを口にし難くなるもの。しかし、歌として声に出すのであれば周囲に気兼ねなく、気を遣われることもなく、言葉を伴いながら何度でも “この世にいない誰か”のことを想うことができるのだ。そして本作には、観客の固定観念を利用することで物語をある方向へと舵を切らせる意外性もある。
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