沈没家族 劇場版の映画専門家レビュー一覧

沈没家族 劇場版

    加納士が大学の卒業制作として発表し、PFFアワード2017審査員特別賞受賞など高評価を得たドキュメンタリーを再編集して劇場公開。1995年、東京の東中野で始まった共同保育“沈没家族”。ここで育った加納監督が、当時の体験を振り返ってゆく。注目のバンド、“MONO NO AWARE”が音楽を担当し、本作のために『A・I・A・O・U』を新たに書下ろしている。
    • 映画評論家

      北川れい子

      監督本人が特異な環境に育った自分を素材にして、そこで出会った人々の現在を描きつつ、家族のありようを問う……。聞けばもとは大学の卒業制作だったとか。確かにチラシで募集した見ず知らずの保育人に育てられたという体験は記録ものだろうが、どうも表面的で突っ込み不足、いいとこ撮りのプライベート・フィルムの印象も。もし全く別の人がこの素材を撮っていたら、もっとリアルで生臭いドキュメンタリーになったと思うが、当事者の加納監督、当時を単純に懐かしむだけ。

    • 映画文筆系フリーライター、退役映写技師

      千浦僚

      私はこの監督が回顧、検証する彼の母親と共同保育の関係者と同世代なのでその“冒険”(思考や思想上の実験というより、やむにやまれぬ、不可逆なトライであったろうからむしろこう呼びたい)が為されたことに感動する。その結果である彼、監督加納土がこうあることでそれが世に知らされていくことも面白い。登場人物が頻繁に、怖い、と口にしていたことが印象深い。育児、成長の様子、再会……ひとと関わることは怖いものなのだ。だからこそ本作は勇気についての記録でもある。

    • 映画評論家

      松崎健夫

      “沈没家族”の当人が大人になり、人生を俯瞰しながら再検証した本作。自身の幼少期のアーカイブ映像がテレビや映画の中にあること自体が特殊であるため、飛び道具的な題材でもある。同時にこのことは、スマホ等の動画撮影機能によって多くの映像素材が保存されていることの意味も再確認させる。つまりは、未来のドキュメンタリー作品のあり方をも垣間見せるからだ。そして「家族の正しいあり方って何だ?」と問いかけながら、「普通って何だ?」という価値観を本作は問うている。

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