リアム16歳、はじめての学校の映画専門家レビュー一覧

リアム16歳、はじめての学校

16歳で初めて学校へ通うことになった少年の成長を見つめるハートウォーム・コメディー。子どもの頃から、母親で親友でもあるクレアに自宅教育を受けて育ったリアム。ある日、高卒認定試験を受けるために出向いた公立高校で、義足の美少女にひと目惚れしてしまう。クレア役に「15時17分、パリ行き」のジュディ・グリア、リアムを新人のダニエル・ドエニーが演じる。監督・脚本は、カナダの新鋭カイル・ライドアウト。
  • 批評家、映像作家

    金子遊

    このような作品のレビューを書くとき、いつも困ってしまう。カナダ映画だが、ほぼハリウッドの職人スタッフが作ったようなフラットなライティングで、カメラの存在を感じさせない自然なフレーミングとカット割りであり、演出的な特徴を指摘できない。だからといって駄作ではなく、むしろ凡百のラブコメよりも示唆に富んだウェルメイドな母子ドラマといえる。ならば俳優論でいくか、自宅教育という本作のテーマに寄せて書くか、と迷っていたところで、早くも字数は尽きていた……。

  • 映画評論家

    きさらぎ尚

    シチュエーションも人物のキャラも極端であるが、今の学校にしろ家庭にしろ、子どもを取り巻く難題の数々を思えば、これもあり。息子を守りたいから16歳まで自宅で英才教育を授ける一方で、大麻の規制緩和を唱える議員関連のジョークを、マリファナを吸いながら言う母は面白い。初めての学校生活を経験するリアムも、周囲に言動をヘンだと思われても、同調しないところが当を得ている。祖母の存在が◎。学校制度や社会システムや母子関係などのポイントを、笑わせながら見せる佳作。

  • 映画系文筆業

    奈々村久生

    自宅教育育ちならではのリアムの世間知らずな純粋さや奔放な振る舞い、それゆえのユニークな言動が、愛すべきキャラクターとして描かれているのだが、肯定的な目線が強すぎる。高校に通い他者を知ることで葛藤が芽生えても、親元を離れた子供や社会に出た若者が直面するそれに比べてはるかに浅く、等身大の人間の経験というよりお花畑レベル。リアムに輪をかけて問題なのが母親のクレアだ。思春期の反抗は教えられてするものではないし、それが描写として笑えないのは致命的だった。

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