パパは奮闘中!の映画専門家レビュー一覧
-
批評家、映像作家
金子遊
フランス語圏のアフリカへ旅行にいったのでフランス語がマイブーム。ときどき聞き取れる会話があると何だか嬉しい。パパがネット通販会社の倉庫で現場責任者という設定も、労働組合の活動にのめりこみ、妻や家庭へのケアが疎かになっていたという状況も、現代社会でいかにもありそうで共鳴できる。渋い家族ドラマになりそうなところを、全篇にわたって手持ちカメラを使い、エスタブリッシング・ショットを省略し大胆に場面転換しているおかげで演出のキレが良く、テンポ良く見れる。
-
映画評論家
きさらぎ尚
確かにパパは奮闘する。朝、子供を起こして着替えに食事、その他の育児に家事に仕事も。70年代から80年代、自立のために家庭を捨てる妻を題材にした作品が量産され、すでに半世紀近くが経つが、この映画のポイントは不満を溜め込んでいた妻が、理由を夫に告げずに黙って去ったこと。夫婦の事情はそれぞれで、さてこの場合は……。答えを観客に委ねた点に意味がある。なのに、劇中に描かれる仕事などの社会問題が抜け、父親の家事・育児問題に矮小化した印象を受ける邦題に違和感も。
-
映画系文筆業
奈々村久生
ロマン・デュリスをはじめ役者陣と子供たちの好演によって、家を出た妻も含め、どの立場の者にも目配せの効いた良作になっている。でも、と思う。これがもし男女逆だったら、ドラマとして成立しただろうか。ある日突然夫が出て行き、残された妻が一人で仕事に家事に育児に奮闘したとしても、どこかで当然だとみなされてしまうのではないか。人としてこなす質量は同じなのに、だ。そして、母親の奮闘だけでは消費されるに足るドラマにはなりにくいという現実自体が大きな課題でもある。
1 -
3件表示/全3件