魂のゆくえの映画専門家レビュー一覧
魂のゆくえ
「タクシードライバー」の脚本や「アメリカン・ジゴロ」などを手がけたポール・シュレイダー監督が構想に50年かけた人間ドラマ。敬虔な牧師トラーは、所属する教会が環境問題の原因を作る企業から支援を受けていることを知り、徐々に信仰心が揺らいでいく。戦争で息子を失った牧師トラーを「6才のボクが、大人になるまで。」のイーサン・ホークが、トラーの力を借りようとするメアリーを「マンマ・ミーア!」シリーズのアマンダ・セイフライドが演じる。第91回アカデミー賞脚本賞ノミネート。
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翻訳家
篠儀直子
誰もが言うだろうとおり、「タクシードライバー」と見せかけて、という映画だが、スタンダードサイズで色の抜けた映像にクラシカルな文字で題名やキャスト名等がかぶさるオープニングが古典映画を思わせるほか、設定はベルイマンとブレッソンの某有名作品を参照していて、彼ら、あるいはカール・ドライヤー的なものを志向していることは、「霊性」を帯びた画面からも見て取れる(興味深いことにそれはホラー映画の画面に似る)。あるシーンでのA・セイフライドの髪の動きに深く感動。
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映画監督
内藤誠
「タクシードライバー」の主人公と同じく、ニューヨークにある教会で牧師を務めるイーサン・ホークもまた、現代アメリカが抱える、日常的な諸問題に悩みながら生きている。イーサンは息子にイラク戦争の従軍牧師になるように勧めた結果、彼を戦死させ、そのせいで妻とは離婚。さらに地球温暖化を怖れるあまり、自殺する信者もいて、物語は途方もない展開になる。しかしポール・シュレイダー自身、牧師の子なので、教会や信者との関係はリアルに演出され、撮りたかった意欲が伝わる。
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ライター
平田裕介
厳格なクリスチャンの両親に育てられたP・シュレイダーが抱いてきたであろう宗教の矛盾や欺瞞への怒り、それでもそこに神秘や奇跡があるはずだという願い。宗教と企業の癒着を見せられてゲンナリしていると、突如として宇宙へと繋がるスピリチュアルな場面には、本気でハッとさせられると同時に彼の想いをひしひしと感じさせられた。中盤からは、シュレイダーが脚本を務めた「タクシードライバー」のトラヴィスよろしくE・ホークが狂気に駆り立てられる展開となっていて身悶え。
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