任侠学園の映画専門家レビュー一覧

任侠学園

今野敏の小説『任侠』シリーズのうち『任侠学園』を西島秀俊と西田敏行のW主演で実写化した人情喜劇。地元密着型ヤクザ・阿岐本組の組長は社会貢献に目がなく、No.2の日村は振り回されてばかり。今度は経営不振の高校の再建を引き受け、日村は学園へ向かう。監督は「劇場版 ATARU」や『民王』などのテレビドラマを手がけた木村ひさし。次々に厄介な案件を引き受ける組長の阿岐本を西田敏行が、組長の気まぐれで高校の理事となる羽目になるNo.2の日村を西島秀俊が演じる。
  • ライター

    須永貴子

    ヤクザの組員たちのキャラクターと関係性が、「また奴らに会いたい」と思わされる可愛らしさ。アクション監督下村勇二&西島秀俊の貫禄の格闘シーンをお約束に、痛快人情コメディとしてシリーズ化できるポテンシャルを感じる。が、ナンセンスなギャグ、特に効果音の使い方がいただけない。例えば、豚の丸焼きの顔を何度もクローズアップにするたびに「ブヒ!」という豚の鳴き声が重なることで、会話のリズムが止まってしまう。シリーズ化には賛成なので、ギャグ禁止でぜひ。

  • 脚本家、プロデューサー、大阪芸術大学教授

    山田耕大

    ヤクザを育てる学校の話ではない。ダメな高校をヤクザが立て直す話だ。設定も筋運びも目新しいものはない。だが、面白い。東映ヤクザ映画へのオマージュなのか、劇伴にのせたメインタイトルの出から、惹かれる。全篇にまぶされた笑いも泣きも過剰になることなく、さらりと差し出してくれて、嫌味がない。話の展開もパターンと言えばそれまでだが、パターンと思わせてしまう隙を見せない。職人技である。これが今の日本映画の平均値だったら、どんなにいいだろう。

  • 映画評論家

    吉田広明

    ヤクザが学校経営という設定の奇抜さだけで終わらない、演出の映画。様々な生徒を巡るエピソードの連鎖の中で、学校の経営権を握ろうとする勢力がいることが明かされ、と飽きさせない展開。原作小説自体の錬成度が高い(シリーズ化されている程だし)うえに、反復される台詞や仕草、効果音など編集が的確なためにギャグも上滑りしていない。組員一人一人のキャラが際立っており、特に西田敏行の芸の幅には大いに助けられている。これなら続篇もぜひ見てみたい。

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