ホワイト・クロウ 伝説のダンサーの映画専門家レビュー一覧

ホワイト・クロウ 伝説のダンサー

レイフ・ファインズが監督と出演を兼任し、実在のダンサーであるルドルフ・ヌレエフの半生を綴る人間ドラマ。1961年、キーロフ・バレエの一員として海外公演のために祖国ソ連からパリへと旅立つ23歳のルドルフ。だが、その一挙一動はKGB職員に監視されていた。主演ヌレエフをタタール劇場の現役プリンシパル、オレグ・イヴェンコが演じ、共演に「ダンサー、セルゲイ・ポルーニン 世界一優雅な野獣」のセルゲイ・ポルーニン、「アデル、ブルーは熱い色」のアデル・エグザルホプロス。脚本を「めぐりあう時間たち」「愛を読むひと」のデヴィッド・ヘアーが務める。
  • 翻訳家

    篠儀直子

    パリ到着から亡命までの数日間をベースに、ヌレエフの幼少時代、レニングラードでの修業時代が複雑に交錯する構成。彼が「ここではない場所」を常に求めつづけていたという解釈に説得力があり、主演者が見せる高慢な微笑も、いかにもヌレエフっぽくて魅力的。でもせっかく本物のダンサーを主演に迎えたのだから、もっとダンスをたっぷり見せてくれてもよかったのに。ところでヌレエフのパリ滞在と亡命は、2015年にBBCのドキュドラマにもなっているとかで、こちらも大変気になる。

  • 映画監督

    内藤誠

    レイフ・ファインズがルドルフ・ヌレエフを研究し、どうしても映画化したかったという意気込みがよく伝わってくる。オレグ・イヴェンコも期待にこたえ、伝説のダンサーを体現し、バレエにかける情熱を激しい身振りとことばで演じて、みごと。監督みずからヌレエフのバレエ教師役をつとめているが、脇役もよく、パリの美術館などが丁寧に描かれているので、ヌレエフが亡命したくなる気持ちも分かりやすい。KGBを相手にアンドレ・マルローまで関係してくる亡命シーンは圧巻だった。

  • ライター

    平田裕介

    バレエの世界とその住民にはまったく無知の身ではあるが、しっかりと楽しめた。レイフ・ファインズによる緩急を効かせた演出もさることながら、やはり魅せられたのはヌレエフという人物。生まれついてのボヘミアンなうえに全身でもって芸術を愛する彼に国やイデオロギーという価値観はまったくもって意味がない。このピュアネスぶりが刺さるし、他国のダンサーとの共鳴がこれまた染みまくるのだ。ル・ブルジェ空港での亡命も派手さはないが、彼に魅せられるがゆえに異様にアガった。

1 - 3件表示/全3件