窮鼠はチーズの夢を見るの映画専門家レビュー一覧

窮鼠はチーズの夢を見る

水城せとな原作のコミックを「リバーズ・エッジ」の行定勲が実写映画化。広告代理店に勤める大伴恭一は、受け身の性格が災いして不倫を繰り返していた。ある日、妻から派遣された浮気調査員として大学の後輩・今ヶ瀬渉が現れ、恭一への一途な想いを告白する。出演は、「100回泣くこと」の大倉忠義、「カツベン!」の成田凌、「チワワちゃん」の吉田志織、ドラマ『ルパンの娘』のさとうほなみ、ドラマ『まだ結婚できない男』の咲妃みゆ、「ジムノペディに乱れる」の小原徳子。
  • 映画評論家

    北川れい子

    劇映画を観察する、というのも妙な言い回しだが、ドキュメンタリー作家・想田和弘の、いわゆる“観察映画”を観ている気分だった。ナレーションも音楽も一切使わず、ただその土地に暮らす人々を被写体にした作品。いや本作には説明台詞もあるし、控え目ながら音楽も使われているが、2人の男優が演じる手のかかる追っかけっこを、ひたすら見せられているだけ。つまり、2人の役どころは、都会という水槽を泳ぎ回っている観賞魚並ってワケで、女たちは水槽の中のお飾り。

  • 編集者、ライター

    佐野亨

    達観と焦燥のはざまで揺れ動く微細な感情の変化を映画の画面のなかでたおやかに見せる成田凌、その役者としての華にあらためて感服。成田の胸を借りるかたちとなった大倉忠義も、一つひとつの所作をだいじにした演技で映画が伝えようとしている空気感の醸成に貢献している。行定監督と俳優陣の相性の勝利。ラスト近くの成田のことば、「あなたは愛してくれる人に弱いけど、結局その愛情を信用しないで、自分に近づいてくる相手の気持ちをつぎつぎ嗅ぎまわってる」。ドキリとした。

  • 詩人、映画監督

    福間健二

    一三〇分の尺。四〇分でもう息切れかとも感じたが、そこから先をなんとか粘るのが行定監督のプロ根性。大倉忠義演じる恭一は、モテる。如才ない。世間を怖がらない。キャラクター的に「あり」だとしても、惚れたくはない。でも惚れてしまったのが成田凌演じる渉。彼には、甘く言うとウォン・カーウァイやロウ・イエの世界でも通用しそうな魅力がある。二人の恋のじゃまをすることになる女性陣は、結局、フェミニズムの視点からも抗議を受けそうな、おとなしいか便利かという動き方。

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