アメリカン・アニマルズの映画専門家レビュー一覧

アメリカン・アニマルズ

2004年にケンダッキー州の大学図書館で中流階級の若者たちが犯した実在の窃盗事件を映画化。つまらない日常に風穴を開けたいと願うウォーレンとスペンサーは、大学図書館に保管されている1200万ドル相当の貴重な本を盗み出すことを思いつくが……。出演は「デッドプール2」のエヴァン・ピーターズ、「聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア」のバリー・コーガン。メガホンをとったのは、これが長編映画初監督となるバート・レイトン。本人たちが出演するドキュメンタリーとドラマのハイブリッド形式で物語が進行する。
  • ライター

    石村加奈

    タイトルがまずクールだ。レイト監督は、大学図書館で大胆不敵な強盗事件を起こした四人の大学生を、“アニマルズ”と表現する。スペシャルな人生を熱望し、恐怖の一線を易々と越えてしまった彼らが自滅を辿る中、自分以上に家族の人生を台無しにしたことと(メンバーの一人、チャズの「殺す」という言葉が印象的)、司書を傷つけたことを後悔する姿は新鮮だ。物語と並行して事件を起こした本人たちが登場し、夫々の真実を語る構成も面白く、ちぎり絵のフラミンゴのように味がある。

  • 映像演出、映画評論

    荻野洋一

    ありきたりな人生を払拭したい学生グループが自分探しの延長で強盗に。しかし犯罪ごっこもまたありきたりな物語しか生まず、「特別な人間はいない」とグループのリーダーは自嘲するほかはないのだが、刑期を終えた実際のモデルたちがカメラの前で実録的回想をくり返すことで、映画はかえって調子を崩している。「聖なる鹿殺し」のあの凄い顔を持つ男の子はじめ秀逸なキャスティングに成功し、珍妙な味わいを出せているのだから、愚直に青春犯罪喜劇を追求すべきだったのでは?

  • 脚本家

    北里宇一郎

    大学生四人組が美術館の貴重な画集を強奪。そのどシロートぶりにハラハラどきどき。計画と実行のあまりのズレ加減に、見てるこちらは手に汗、というより失笑苦笑の連続。そのおかし味を映画は狙って。加えて劇中にモデルとなった実際の犯人たちも登場。あの時はこうだったとコメントする。この虚々実々のスタイルに、作り手の野心を感じ。だけど高見から登場人物たちを見降ろしすぎの気も。だから連中がどうなろうとカンケーねえやとなって。ま、そんな無責任な面白さはあるけれど。

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