主戦場の映画専門家レビュー一覧
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ライター
石村加奈
映画を“主戦場”に選んだミキ・デザキ監督のアイデアは素晴らしい。スクリーンと向き合う私たちが戦場に立つ覚悟で本作を観れば、慰安婦問題が一筋縄に解決しない理由がよくわかる。同時に今の社会には、自称歴史学者同様、自称政治家や自称ジャーナリストの多いことよ! 彼らの物言いに、他者を知る努力を放棄し、自分の思ったことをそのまま、一方的に主張する行為は暴力であると思い知る。軽薄な言葉を乱用する社会に、私たちは生きている。自戒を込めて、無知もまた暴力である。
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映像演出、映画評論
荻野洋一
日本国内の言論はすっかり萎縮状況が固定してしまっており、従軍慰安婦問題を正面から取り上げる作品が国内から登場するとは思えない。その意味で本作は昨夏に公開されたフランス資本の「国家主義の誘惑」と似たような位置づけだ。両作に共通するのは、欧米主導による日本問題の顕在化戦術であり、「外圧」ゆえに余計な忖度がなく、言わば帰国子女の転校生のような豪気さが画面に充満する。また、当事者(元慰安婦)そっちのけでコメントをカットバックする逆説的手法も興味深い。
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脚本家
北里宇一郎
いま、これを描かねばという想いに溢れて。慰安婦問題。日韓の主張が食い違い、評者たちの言い分も相反する。ネットも含め、そのほとんどが感情的なやりとりで。だからこそ、このドキュメントは重い。あらゆる人たちの発言に耳を傾け、その反対意見の論者に語らせる。歴史資料でロジカルに。監督は在米の日系2世。それゆえか視点が客観的。決して情に溺れない。あくまでも理性で問題を捉えていく。だから本質を突いて鋭い。元慰安婦たちは変わらず被害者であるという指摘が沁みて。
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