ワイルドライフ(2018)の映画専門家レビュー一覧
ワイルドライフ(2018)
「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」などで活躍する俳優ポール・ダノの監督デビュー作。1960年代。アメリカの田舎町で両親と共に暮らす14歳の少年ジョー。だが、職場を解雇された父が出稼ぎに出たことをきっかけに、幸せだった生活は変貌してゆく……。原作は、ピューリッツァー賞作家リチャード・フォードの小説『WILDLIFE』。出演は「ヴィジット」のエド・オクセンボールド、「未来を花束にして」のキャリー・マリガン、「スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム」のジェイク・ギレンホール、「モリーズ・ゲーム」のビル・キャンプ。
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批評家、映像作家
金子遊
14歳のジョーを演じる俳優の雰囲気が、どこかポール・ダノに似ている。監督ダノは視点人物の少年に自分を仮託することで、原作小説を映像化できると直感したのだろう。物をつくる時ってそういうものだ。壊れゆく夫婦をキャリー・マリガンとJ・ギレンホールが演じ、撮影はレイガダスやアピチャッポン作品で知られるディエゴ・ガルシア。完璧な布陣。でも映画って最後は演出家のものだ。父の不在によって母がなぜ奇異な行動にでるのか、そこが腑に落ちる演出ならベターだったかも。
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映画評論家
きさらぎ尚
いつ崩壊しても不思議はない家族を描いて、展開に抑揚があるわけではないのに、見ごたえがある。誰も悪くはないが、ただ両親には「何をやってるのよ、大人は」と小言の一つも言いたくなるのがミソ。今さら変われない大人に対して、14歳の少年の変化と成長は逞しく、安心する。穿った見方を承知の上で、アメリカは積み上げてきた秩序を壊す大統領が意気軒昂だが、モンタナの60年代の風景と家族と暮らしに、本来のアメリカ力を垣間見る思い。地味な話だが手堅い演出で深いドラマに。
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映画系文筆業
奈々村久生
作家性の強い作品への出演で知られる俳優のポール・ダノが、エリア・カザンの孫娘であり自身のパートナーでもあるゾーイ・カザンとの共同脚本で監督デビュー。ギレンホールとマリガンの起用を含め、題材の選び方、映画との向き合い方など、どこを取っても申し分のない座組みでまさに死角なしと言ったところ。あまりにツッコミどころがなさすぎてある種の物足りなさや退屈さまで装備しているほどだ。ラストで家族のポートレート撮影を試みる少年が、自ら家族を再構築するシーンが象徴的。
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