永遠に僕のものの映画専門家レビュー一覧

永遠に僕のもの

アルゼンチン全土に衝撃を与えた連続殺人犯の少年の美しくも儚い青春を綴るペドロ・アルモドバルによるプロデュース作。1971年、他人の持っている物を無性に欲しがるカルリートスは、相棒と手を組み、窃盗、嘘を重ね、さらには僅か数年で12名以上の殺人を犯す。出演は、本作がデビューとなるアルゼンチンの新星ロレンソ・フェロ、『嵐の中で』のチノ・ダリン、「偽りの人生」のダニエル・ファネゴ、「オール・アバウト・マイ・マザー」のセシリア・ロス。監督はアルゼンチンの俊英ルイス・オルデガ。
  • 非建築家、美術家、映画評論、ドラァグクイーン、アーティスト

    ヴィヴィアン佐藤

    物語の根幹から誰しも彷彿するのがジャン・ジュネの犯罪や性倒錯という背徳哲学、そしてカルリートスの美しい横顔からはジャン・コクトーの素描であろう。完全に外部で盗み続ける(=生き続ける)彼の過程は、こちら側の世界の反転した自画像。人間社会に刺さる永遠の棘とも言える。ジュネは「空間は奪われるもの」で「時間は聖なるもの」と言う。カルリートスにとって盗みに入った家でも牢獄であろうと違いはさほどない。時間に関係する、生きること(=盗むこと)が重要だったのだ。

  • フリーライター

    藤木TDC

    耽美系少年愛映画風の宣伝で男性客を遠ざけてるが、正味はセクシュアリティ不安を抱えた美貌のナチュラルボーンキラーがベルボトムのズボンからもぞもぞ二丁拳銃をとりだし男を殺しまくるクライムムービー色の濃い内容。男性客にも充分楽しめる。BGMに流れるアルゼンチンの70年代サイケデリック・ロックにも激しく萌え。サントラ欲しい。ジェンダームービーとグラインドハウスの合体は政治的なのか倒錯か。カタルシスを寸止めしてムズムズ感を残す連続射殺魔映画。

  • 映画評論家

    真魚八重子

    本質は意外と渋い犯罪映画。プロデューサーのペドロ・アルモドバルの粘度と退廃美が、監督のルイス・オルテガの持ち味らしいフィルム・ノワール風味と、良い配分であわさっている。同性愛の傾向を示しながらそちらに傾斜しすぎない、独特の意固地さのようなものも映画を乾いた空気にしている。美貌の冷血な主人公が、犯罪とダンスの瞬間だけ能動的になる危うさと官能性。主人公を演じるロレンソ・フェロの容貌は、1971年という時代設定もあって日本の少女漫画を髣髴とさせる。

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