ホテル・ムンバイの映画専門家レビュー一覧
ホテル・ムンバイ
2008年、インドで実際に起きたテロ事件を基に映画化。商都ムンバイで五つ星ホテルがテロリストに占拠された。3日間閉じ込められた500人の人質たちはその多くが生還。そこにはプロとしての誇りをかけて宿泊客を救おうとしたホテルマンの知られざる物語があった。出演は「LION ライオン 25年目のただいま」のデヴ・パテル、「君の名前で僕を呼んで」のアーミー・ハマー。監督は、本作が長編デビューとなるオーストラリア出身のアンソニー・マラス。
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映画評論家
小野寺系
期待の監督アンソニー・マラス長篇デビュー作。実際の出来事の映画化作品ながら、「ダイ・ハード」や「タワーリング・インフェルノ」を想起させる娯楽作として成立しているところが凄まじい…!その上で被害者のあっけない殺され方に漂う無情なリアリズムや、テロリストとして送り込まれた青年たちの葛藤を描くバランスがモダンで素晴らしい。一方で、西洋側の視点をもって、西洋人が多く泊まるホテルへのインド人たちの忠誠を美徳として描くことへの“ためらいのなさ”には疑問を持った。
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映画評論家
きさらぎ尚
作品の成り立ちからして面白いとは言いにくいので、実話の強みと手に汗握るサスペンス性を併せ持つ、とする。主人公のホテル従業員と料理長の信念と行動力はもちろん立派だが、劇中に散見するテロリストたちの状況にも関心を向けているのでドラマが力強い。無言で人を射殺する一方、恐怖心が募り泣きながら父親に電話をする者や、父親に「もうお金はもらったか」と電話で確認する者までいる現実を見せつけられるとは……。首謀者の偽善に操られる彼ら。根深い哀しみを見た。
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映画監督、脚本家
城定秀夫
映画としての完成度は素晴らしく、実話である事の強味を最大限援用した脚本と強靭な演出には全く緩みがない。こんな悲惨な事件をこんなに面白くしちゃっていいの? という思いは拭いきれないが、それは映画というものが予め孕んでいる原罪なのだと思う。自分たちの行為が召命であると盲信し残虐の限りを尽くすテロリストに立ち向かおうとするロシア人の客に「神のご加護を祈ります」とコック長が声を掛けるシーン、彼が返した言葉に肌が粟立った。「祈るな。それがすべての元凶だ」。
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