ポップスターの映画専門家レビュー一覧

ポップスター

ナタリー・ポートマンが主演・製作総指揮を兼任した音楽ドラマ。銃乱射事件の生存者として、追悼式で歌を歌ったことをきっかけに新進ポップスターへと上り詰めたセレステだったが、度重なるスキャンダルで失墜。再起をかけたツアーの初日、ある事件が起こる。共演は「ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生」のジュード・ロウ、「グッバイ・ゴダール!」のステイシー・マーティン、「トゥモローランド」のラフィー・キャシディ。監督・脚本は「シークレット・オブ・モンスター」のブラディ・コーベット。
  • ライター

    石村加奈

    冒頭の「詩的な名前に導かれた人生」というW・デフォーの囁きが鑑賞中、ずっと耳にこびりついていた。「詩的」とは言い得て妙で、歌姫セレステの人生は、数奇な出来事に搦めとられ、あてどなく漂流する心もとなさを抱えたまま、ラストのステージへと集約される。N・ポートマン渾身のパフォーマンスは、まさに〈Sweat and Tears〉。圧巻だが精一杯の汗と涙には、切実さや面白さを感じられず、むしろ客席のJ・ロウよろしく白けてしまったのは、直前の二人のシーンも尾を引いたかと。

  • 映像ディレクター/映画監督

    佐々木誠

    終始不穏な空気が漂う不安定な展開、リアルで壮大、完璧に作り込んだライブシーンの熱狂に反した複雑なカタルシス。しかしそれらが本作の魅力だ。これは監督のコーベットが見てきた風景を再構築しているのは間違いない。ミレニアム前夜、高校内で起こった銃撃事件、911、SNS、そしてショービジネス。17年間の時代の変化を一人のポップスターの誕生と再生に重ねて描いているが、これはメディアが操作する情報に翻弄されてきたエンタメ業界に生きる者の体感、その記録だ。

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