ザ・レセプショニストの映画専門家レビュー一覧
ザ・レセプショニスト
台湾出身、イギリス在住のジェニー・ルー監督が実話に着想を得てアジア移民の現実を描き、第一回熱海国際映画祭グランプリを獲得した人間ドラマ。台湾人のティナはロンドンで職にありつけず、不法風俗マッサージパーラーの受付嬢として働くことになるが……。「南風」のテレサ・デイリー(テレサ・チー)、「エドワード・ヤンの恋愛時代」のチェン・シャンチーらが出演。2017年ソチ国際映画賞&フェスティバルにて最優秀映画賞を受賞。2019年5月10日よりイオンシネマ富士宮にて先行上映。
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映画評論家
小野寺系
異国の地で違法労働を行うことを余儀なくされるアジア人女性たちの存在にスポットライトをあてたという意味では、いま最も意義があると感じられる一作で、彼女たちを襲う過酷な現実を通して弱者を踏み潰す傲慢な存在を浮き上がらせることにも成功している。題材の選び方にセンスを感じる一方、弱者同士の連帯を熱く描く演出や物語の展開は、かつてのアメリカンニューシネマなどの焼き直しにも思える。もういくつか新しいアイディアを用意すれば、時代を代表する傑作になり得た。
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映画評論家
きさらぎ尚
台湾出身で英国在住の女性監督に、この映画を作らせたのは、セックスワーカーをしていた友人の自殺だったそうだ。それだけでも胸が痛いが、違法マッサージ店の女経営者、アジア系の従業員たち、受付係のヒロイン、客たちの誰一人として、登場人物に幸せな人はいない。移民の、それも学歴や資格のないアジア人の現実だと言われればそうかもしれない。ヒロインの眼を通した身も蓋もない露骨な描写は、監督の思いの切実さか。その場所から離れても、この問題は解決しないのがやるせない。
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映画監督、脚本家
城定秀夫
終始揺れてる手持ちカメラやぶっきらぼうなカッティング、退色気味なグレーディングなどはいかにも賞を獲りそうなアート映画のルックであるのに対し、物語運びや芝居の質、感情を分かりやすく底上げさせようとする音楽などはかなりの割合で娯楽映画のそれに寄っているというチグハグな印象を受ける演出で、それらが相まって妙なムードが出ていた側面もあるとはいえ、ミミズの挿話などは直接的にすぎると感じてしまうし、この話で生オッパイを出さないことにも踏み込みの甘さを感じた。
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