シークレット・スーパースターの映画専門家レビュー一覧
シークレット・スーパースター
「きっと、うまくいく」のアーミル・カーンが製作・出演した人間ドラマ。14歳の少女インシアの夢はインド最大の音楽賞の舞台で歌うことだったが、厳格な父に歌うことを禁じられてしまう。そこで彼女は、顔を隠して歌った動画をYouTubeにアップする。出演は、「ダンガル きっと、つよくなる」のザイラー・ワシーム、「バジュランギおじさんと、小さな迷子」のメヘル・ヴィジュ。監督・脚本は、アーミル・カーンの元マネージャーで、本作が監督デビュー作となるアドヴェイト・チャンダン。
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批評家、映像作家
金子遊
むろん歌手を夢見る少女を描いた娯楽作だと心得ている。家庭内における家父長制的な暴力と、女性や少女の人権へのメッセージが入っており、良心的作品だとも思う。だが、インドで少数者であるムスリムに対する偏見(背後にはパキスタンがある)を助長しかねない描写が散見される。さらに本作が中国で大ヒットしたそうだが、中国政府によるウイグル人の虐殺と弾圧を考えれば、その無邪気さに顔をしかめざるを得ない。映画も場合によっては人を傷つける武器になることを忘れずに。
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映画評論家
きさらぎ尚
今回は図らずもインドの差別を扱った作品が2本。こちらは女性蔑視(=DVを含む男性の横暴さ)。テーマはシリアスだが、夢を追う少女の利発さと行動力が、インド映画に特有の強引さと娯楽性たっぷりな展開とで描かれているので、単純なサクセス物語を超えて痛快。特に青春ど真ん中のヒロインを演じるZ・ワシームのエネルギーと、A・カーンの硬軟自在な存在とがベストマッチ。エンタメ性と社会性ががっちり絡まり、インド映画にしては珍しく、150分を長尺に感じない。面白い。
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映画系文筆業
奈々村久生
こちらはインド版「アリー/スター誕生」といったところか。しかしやはり厳格なムスリム家庭で父親という男性の抑圧下にある少女が歌で自立を目指すテーマを描いており、どちらかというとそちらがメイン。ヒロイン役のザイラーのワイルドな風貌と太い三つ編みに説得力がある。大スターのアーミル・カーンがプロデュースと出演も。カーンはムスリムのヒットメーカーでありながら、女性や子供の地位向上につとめる活動にも貢献しており、インド映画界においてその功績は計り知れない。
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