荒野の誓いの映画専門家レビュー一覧

荒野の誓い

クリスチャン・ベール主演の西部劇。1892年、ニューメキシコ州。かつてインディアンと戦った騎兵隊のジョー・ブロッカーは、シャイアン族の酋長イエロー・ホークの護送任務に就く。途中、コマンチ族に家族を殺された女性ロザリーを加え、旅は続くが……。共演は「プライベート・ウォー」のロザムンド・パイク、「アバター」のウェス・ステューディ、「君の名前で僕を呼んで」のティモシー・シャラメ。監督は「ブラック・スキャンダル」のスコット・クーパー。
  • アメリカ文学者、映画評論

    畑中佳樹

    まるでジョン・フォードの「捜索者」のように始まり、だが娘は拉致されずに殺される。美しく成長した娘の帰郷で終わる「捜索者」に対し、この映画は最後に生き残った三人の擬似家族の旅立ちを描いて終わる。その間に西部劇のエッセンスの全てがゆっくりとした移動の織りなすこのジャンルならではのリズムで展開する。最後にインディアンと和解する主人公の成長は、異人種への差別、憎悪を少しずつ克服していった西部劇の歴史そのものの縮図のようだ。慟哭すべき傑作。

  • ライター

    石村加奈

    冒頭の「音楽が静かに流れる」という言葉の余韻。作中、マックス・リヒターの音楽は、哀しみに襲われる登場人物たちに、静かに寄り添っていた。音楽だけでなく、行き届いた音の調整が、激しい戦いが繰り広げられる荒野の荒涼感を演出する。ブロッカー大尉のうめき声は、雷の音にかき消されるも、家族を埋葬し、子供のように号泣するロザリーの泣き声は、広野に響きわたる。抑制されたラストシーンも好みだ。死の確実性に惹かれても、人はいくつになっても、慣れない人生を生きていく。

  • 映像ディレクター/映画監督

    佐々木誠

    先住民との抗争が収束しつつある1892年のアメリカを舞台に、その「負の歴史」を「現在の断絶」と重ねた視点から描く西部劇。相変わらずのベールの仏頂面が荒野に映えるのだが、シャラメやプレモンス、フォスターなど若手売れっ子たちが短い出番にも拘らず参加しており、この視点、アプローチへの関心の高さが窺える。こうした「負の歴史」を認め、エンタテインメントとして真っ向から描き、観客に考えを促す映画が公開できるのもまた“アメリカ”だな、とあらためて思った。

1 - 3件表示/全3件

今日は映画何の日?

注目記事