ラスト・ムービースターの映画専門家レビュー一覧
ラスト・ムービースター
2018年9月6日に逝去した名優バート・レイノルズ最後の主演作。往年の映画スター、ヴィック・エドワーズのもとにある映画祭から功労賞受賞の招待状が届く。しぶしぶ参加するも名もない映画祭だと知り憤慨するが、そこは彼が生まれ育った街の近くだった。監督・脚本は、「LOOK」のアダム・リフキン。出演は、ドラマ『モダン・ファミリー』のアリエル・ウィンター、「キック・アス」シリーズのクラーク・デューク、「ザ・サークル」のエラー・コルトレーン、「ヘアスプレー」のニッキー・ブロンスキー、「お!バカんす家族」のチェヴィ・チェイス。
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非建築家、美術家、映画評論、ドラァグクイーン、アーティスト
ヴィヴィアン佐藤
劇中のヴィック・エドワーズとは、ほとんどバート・レイノルズ自身のことのような錯覚に陥る。出演作の中で過去の若い自分と対峙する場面が幾度となく描かれる。過去の自分から逆襲を受けたり、戒めたり。若き日の自分は完全に過ぎ去った過去ではなく、いまも生き続けている。決まり切った因果論ではなく、現在の自分も少し先の未来の自分からの影響があるのだ。輝く夜空の星々は現存しなくとも我々に光は届く。しかし我々が見上げ対峙しなければ存在しないのだ。
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フリーライター
藤木TDC
泣けた。低予算、出オチ、お涙頂戴。本作をくさすフレーズはいくらも思いつく。だがそれゆえに得られるかけがえのない感動もある。老醜を誇張し俳優人生の最終回を演じたB・レイノルズは喜劇として楽しんでいるように見え、その晩年の姿はファンにも幸福を分け与える。70年代以降映画館やビデオテープで男性活劇を大量に見た世代は作中のどこかに自分の存在を感じ、映画愛が報われる瞬間に涙するはず。心優しき予定調和の極み。鑑賞後、バーで献杯を。
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映画評論家
真魚八重子
ヴィック・エドワーズという架空の俳優に託されたバート・レイノルズの肖像。得体のしれない映画祭は実際に存在するので、老いて孤独な俳優が招かれていそいそと出かけてしまう生々しさにひやりとする。レイノルズの出演作の選択ミスなど実像に近い辺りより、虚構のストーリーに面白みがあり、過去を辿る寄り道の物語が静かにドラマチック。ハレとしての祭りを通じて再生し、ささやかな幸福を迎える展開は決して目新しくはないものの、優しさには心をほだされる。
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