アスの映画専門家レビュー一覧

アス

「ゲット・アウト」のジョーダン・ピールによるスリラー。子供だったアデレードは両親と遊園地へ出かけ、ミラー・ハウスに迷い込む。その鏡の迷路に映っていたのは自分とそっくりな少女だった。現在、大人になったアデレードは、家族と共に当時の家を訪れる。出演は、「それでも夜は明ける」のルピタ・ニョンゴ、「ブラックパンサー」のウィンストン・デューク、ドラマ『ハンドメイズ・テイル/侍女の物語』のエリザベス・モス、「ファンタスティック・フォー」のティム・ハイデッカー。
  • アメリカ文学者、映画評論

    畑中佳樹

    古典的なホラー映画の序破急を排して、いきなり敵が突進してくるいわば破急急の展開に目がさめる。そしてその敵とはもう一人の自分であるというドッペルゲンガー(映画的には一人二役)のテーマ、ゾンビの黙示録的世界、カズオ・イシグロの『わたしを離さないで』、ゴキブリ的スピードの暴発と、思わずなぐり書きしたメモ群の収拾がつかない。要するにとんでもなく知的に興奮させる。終盤の絵解き部分がやや駆け足で詰め込みすぎか。ラストの「チェンジリング」に悲鳴!

  • ライター

    石村加奈

    母が少女時代に大事にしていたぬいぐるみの、娘のTシャツの、ラストシーンで息子が抱いていた、それぞれのウサギは何を暗喩するのか? 恐怖から目を逸らすべく考え続けたが、うまく集中できなかったのは、見事な音楽効果のせいだ。恐怖で固くなった心を激しくかき乱す弦楽器の音色から、ルーニーズの〈I Got 5 on It〉やビーチボーイズの〈グッド・バイブレーション〉などの西海岸系、エンドロールで流れる歌姫ミニー・リパートンの〈レ・フルール〉まで、人を食ったような選曲に震撼。

  • 映像ディレクター/映画監督

    佐々木誠

    自分と家族に瓜二つの者たちが襲ってくる、というありそうでなかったドッペルゲンガー映画。笑いと恐怖は紙一重、というのを丁寧に描いた上質なスリラーで、その斬新な恐怖のアイデアから徐々に壮大なトンデモ展開になるのは監督の前作「ゲット・アウト」と同じだが、最終的に奇妙な感動を呼ぶところがポイント。トランプ政権以降加速している露骨な格差問題を組み込んだ構造が秀逸で、お前ら何者だ?という問いに“分身”が返した「答え」が本作の全てを集約している。

1 - 3件表示/全3件