君がいる、いた、そんな時。の映画専門家レビュー一覧

君がいる、いた、そんな時。

広島県呉市を舞台に、不器用に生きる小学生2人と新任司書が織りなす人間ドラマ。クラスでいじめられているフィリピン人と日本人のハーフの正哉は、新任司書・祥子と過ごす図書室をよりどころにしていた。ある日、正哉が図書室に行くと、同級生の涼太がいた。監督は、「父の愛人」の迫田公介。出演は、「映画 としまえん」の小島藤子。
  • フリーライター

    須永貴子

    商業映画としては、役者の芝居、妙に間延びした編集、あまりにも色気のないカメラワークなど、青さが目立つ。しかし、メインの少年2人を演じる子役たちの青さが、時間経過とともに魅力へと転じ、作品を救い始める。特に、スーパーポジティブ&ハイテンションで常に周囲から浮いている香山を演じる子役は、全身にエネルギーがみなぎり、本物の喜怒哀楽を見せつける。シナリオをなぞるのではなく、キャラクターが物語を動かしているように見えるという点では、成功作。

  • 脚本家、プロデューサー、大阪芸術大学教授

    山田耕大

    モチーフは多岐にわたる。差別、いじめ、虐待、親と子、死。どれも映画のモチーフとしては、取り上げられることがあまりに多いとしても、取り組むことに意義のあるものばかり。が、そのモチーフのそれぞれが、行き当たりばったりに中途半端な形で出現するような印象が強く、どれに集中して観ていいのかわからなくなってしまう。つまりはとても雑然としているのだ。あちこちつまみ食いをしている感じがして、本当の味を味わえない。映画にとっては技術が大切だと思わせた作品である。

  • 映画評論家

    吉田広明

    やたらうるさい給食時の校内放送でみなにウザがられ、主人公にも変につきまとってくる少年が、実は自身も悲惨な家庭にいて、しかしだからこそ他人に関わろうとし、周りを変えていこうとする。この少年がこの映画の肝となるが、そのキャスティングに成功したことが本作の成否を決定した。いじめや虐待、未婚の母などシビアな問題が深刻になり過ぎずフワッと描かれているのも、これで観客の間口を広げているし、今どこにでもある問題との認識の表れと見れば、欠点に見えてこない。

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