エイス・グレード 世界でいちばんクールな私への映画専門家レビュー一覧
エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へ
各国の映画祭で数々の賞を受賞した、ユーチューバー出身の新鋭ボー・バーナム監督作。クラスであまり目立たない、卒業間近の中学生ケイラ。不器用な自分を変えようとSNSを駆使してクラスメイトたちと繋がろうとする彼女だったが、いくつもの壁が立ちはだかる。ケイラを演じるのは、本作でゴールデングローブ賞主演女優賞にノミネートされたエルシー・フィシャー。共演は「ダークスカイズ」のジョシュ・ハミルトン、「バッド・ウェイヴ」のエミリー・ロビンソン、『ブルー・ワールド・オーダー』のジェイク・ライアン。
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非建築家、美術家、映画評論、ドラァグクイーン、アーティスト
ヴィヴィアン佐藤
特殊で際立った実例や選民思想を描くことが、大衆小説や物語では常套手段のひとつ。この作品はどこにでもいるような等身大の女の子とその変哲もない周囲を描いた。SNSは誰もが自分を発信し客体化できるメディアで、集団無意識的な理想像を映し出してしまう。その中では自身が監督でありプロデューサーでありタレントでもある。世界の中心は自分自身であり主役は自分。その理想像からはみ出し、人が最も見せたくはない無防備で余剰な現実をユーモラスに描いて見せた。
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フリーライター
藤木TDC
ネット世代の中二病女子が性体験のさざ波に足をさらわれ悶々。大昔の「ポーキーズ」などに較べ萌芽年齢も若いし淡い。昭和37年生れの筆者はアクチュアルな中二世界は知らないことばかり。主人公の父親の視点があって感情移入できたのは救いだった。ひと夏の経験はさして過激なグレードまで発展せず父親世代は安心して見られる。娘との和解は中年男性客の泣きどころ。サービス的でやや鼻白むが。にしてもバツイチ親父、娘ばかりに執心してないで外に女作れとエールを送った。
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映画評論家
真魚八重子
日本でいう中2の時期の波乱は緻密に描かれている。ネットに密着して自己顕示欲が増し、しかしそれを制御する客観性や抑止力は未熟で、なおかつ性的な視線には容赦なくさらされ始める。そんな危うさを確かに描きつつも、映画の世界観は少女ケイラの小さな世界でこぢんまりと終始してしまっている。対象が少女なだけで、平凡な大人の日常を描く映画の退屈さと大差ない。ケイラと父親との関係は繊細だが、彼女が自信なく背を丸めた演出なども誇張が過ぎて引っかかる。
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