ジョアン・ジルベルトを探しての映画専門家レビュー一覧

ジョアン・ジルベルトを探して

『イパネマの娘』など数々の名曲を手がけボサノヴァの神と称されるブラジルの伝説的ミュージシャン、ジョアン・ジルベルトの行方を追った音楽ドキュメンタリー。10年以上公の場に姿を見せないジョアンを追い、彼ゆかりの人々や土地を訪ね、ブラジル中を巡る。ジョアンの元妻である歌手のミウシャや、マルコス・ヴァーリ、ジョアン・ドナートなどブラジルを代表するミュージシャンが多数出演、ジョアン・ジルベルトの魅力を語るインタビューが収録されている。
  • 非建築家、美術家、映画評論、ドラァグクイーン、アーティスト

    ヴィヴィアン佐藤

    今年のドキュメンタリー暫定1位。「不在」を追い求め彷徨い続けるカメラ。ジルベルトという亡霊に取り憑かれ、故マーク・フィッシャーの足跡とジルベルトの残り香に戯れる。ボサノヴァというウィスパー音楽はブラジルの住宅事情により派生したと聞く。そもそも壁の向こう側から流れてくる調べは否応なしに「不在性」が関わってくる。フィッシャーは「音楽は終わらない。部屋のものと結びつき空気や僕たちと繋がっていく」「消え残ったのだ」と。これこそ映像体験そのものではないか。

  • フリーライター

    藤木TDC

    哀悼ジョアン・ジルベルト。とろけるような彼のボサノヴァとリオの美しい風景が観客を甘やかなシエスタに導く中年男のセンチメンタル・ジャーニー。にしても世界が認める生きる伝説に電凸面会を試みるってあまりにも無謀な気が。加えてドイツに21世紀までジョアンを知らなかった人間がいた事実にも?然。かの男は手紙に「あなたの音楽をドイツに広めたい」と本気で書いたのか?監督の態度を果敢ととるか非礼とみるか。謎な結末も成果か自虐か観賞後の裏読みが盛り上がる。

  • 映画評論家

    真魚八重子

    監督のG・ガショ自身がジルベルトとの邂逅を求めてさまようのだが、映画を牽引するほど魅力的な人物とは思えず、いささか自己愛を感じた。逝去したライターのマーク・フィッシャーがジルベルトに会おうとする?末を描いた本からの引用と、監督自身のナレーションの境目が曖昧なのも混乱する。大御所マルコス・ヴァーリのインタビューなどは観る価値があるが、ジルベルトの周縁をさまよいながらも核心にはなかなか踏み込んでいこうとしない展開を、長々と見せられるのはじれったい。

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