ウエスト・サイド・ストーリーの映画専門家レビュー一覧
ウエスト・サイド・ストーリー
1961年公開のミュージカル「ウエスト・サイド物語」を、スティーブン・スピルバーグが念願の映画化。混沌とした時代のなか、偏見と闘いながら夢を追いかけ“今”を生きる若者たちの禁断のラブストーリーを、数々の名曲や躍動感あふれるダンスと共に映し出す。出演は「ベイビー・ドライバー」のアンセル・エルゴート、3万人のオーディションから選ばれた新人レイチェル・ゼグラー、「ウエスト・サイド物語」でアカデミー助演女優賞を受賞したリタ・モレノ。
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映画評論家
上島春彦
本作に描かれる死が全て、愛に殉じるというより犬死にだ、というところに今回リメイクの意義を認めたい。物議を醸すであろうエンディングについても同様。冒頭のプエルトリカン・ソングは新たに採られた楽曲だがその他はおなじみの名曲。バルコニー場面と〈トゥナイト〉の多重唱モンタージュはオリジナルの趣向を踏襲、しかし〈クール〉や〈アメリカ〉は斬新な振り付けでさすが感が高い。再開発中の地域という舞台設定が皮肉な効果を上げるもこれは演出解釈の変更範囲に留まるかな。
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映画執筆家
児玉美月
ミュージカル映画にとって重要なのは歌とダンスの演出がどれだけ優れているかだろうが、ここには近年の同ジャンルにおける秀作「ラ・ラ・ランド」や「グレイテスト・ショーマン」で魅せられた迸るようなオープニングシーンもなく、「ザ・プロム」のような振り切ったスペクタクルもなく、鈍重な時間のみが過ぎていく。また「アップデート」された点に当事者を起用したトランスジェンダーの役柄が挙げられるが、欲を言えばそこに留まらず表象自体への思慮深さがもう少しほしかった。
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映画監督
宮崎大祐
最高。本気のスピルバーグはやはり途方もなく、今やフォードやエイゼンシュテインにも比肩することは、あらゆるショットが映画の教科書に載せられそうなほど純度の高いヴィジュアル・ストーリーテリングの連鎖だけで出来ている冒頭15分をご覧いただければわかるはずだ。映画全体がこの演出密度で進んでいたのならば、上映後に筆者の脳髄は爆発していたかもしれない。それにしても、色とりどりの服を着た人々が舞い踊り、歌っているだけで人はなぜかくも感動するのだろう?
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