山中静夫氏の尊厳死の映画専門家レビュー一覧
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映画評論家
川口敦子
思うままに余命を生きたいというひとりの物語は身につまされる。一方で看取りを誠実に続けることで自身が病んでいく医師の物語、それが映画の核を侵食していくように書き、撮った監督村橋の選択も光る。医師と息子のすれ違っているようで、そうでもない言葉のやりとりも、あざとさと結ばれそうでひやひやさせるが、ゆっくりと染みてくる。人の姿の奇を衒わない切り取り方。そうして死を前にした人が対峙したいといった山の美しさ。撮影監督高間賢治の力も見逃せない。主題歌は要る?
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編集者、ライター
佐野亨
なんでも暗喩的に描けばよいわけではないが、ここまで直喩的な描写しかないと映画が本来描こうとしているであろう死を前にした患者と医師の心理的葛藤について観客が想像をめぐらす余地がない。立ち止まって見つめるべき風景、頭のなかで反芻し消化すべきことばもスルスルとすり抜けてしまう。ことに医師がうつ病を患ってからの描写は、前半部の風景やことばに十分な重みをもたせていないため、ただ段取りを踏んでいるように見えてしまう。撮影はじめスタッフワークはわるくない。
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詩人、映画監督
福間健二
南木佳士の小説はどこか頼りない線をたどりながら、誠実さを疑わせない力をもつ。これだけかという内容でも、だ。映画にして大丈夫かと思うが、地味さのよさということがある。村橋監督と高間カメラマン、奇をてらうことない画に人をおく。中村梅雀と津田寛治の、死に向かう患者と自分も病みながら彼を看取る医師。どちらの演技も虚構性を忘れさせる瞬間があった。景色、浅間山がいい。江澤良太の、小説家志望の息子もいい。そしてエンディングの小椋佳、なんていい声だろう。
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