国家が破産する日の映画専門家レビュー一覧
国家が破産する日
1997年に韓国で起きた通貨危機の裏側を活写した社会派ドラマ。国民の大半が好景気が続くと信じる中、韓国銀行通貨政策チーム長ハン・シヒョンは通貨危機を予測。政府がようやく非公開の対策チームを招集したときには、国家破産まで猶予は7日間しかなかった。危機を予見するハン・シヒョンを「修羅の華」のキム・ヘスが、綱渡りのような投資に乗り出す青年ユン・ジョンハクを「バーニング 劇場版」のユ・アインが、工場と家族を守ろうとするガプスを「シルミド/SILMIDO」のホ・ジュノが、IMF専務理事を「ゴーギャン タヒチ、楽園への旅」のヴァンサン・カッセルが演じる。「パーフェクト・ボウル 運命を賭けたピン」(未)のチェ・グクヒ監督が、知られざる国家の裏の顔を暴く。
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非建築家、美術家、映画評論、ドラァグクイーン、アーティスト
ヴィヴィアン佐藤
いまや産業は日本に迫り、映画をはじめ文化水準は高い韓国。30年にも満たない過去に国家が破産したことを思い出す人間も多くはない。当時の韓国銀行の通貨政策チーム長の明晰な頭脳と活躍、国家をおもんぱかる姿勢。そしてIMFの悪巧み。上手なサスペンスドラマとして昇華した作品の誕生は、国家の破綻は完全に過去の出来事/歴史として整理ができた証なのだ。歴史や責任における意識がエンタメ作品だからこそ浮き彫りになる。日本も同様に映画作品から読み取られているはずだ。
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フリーライター
藤木TDC
本作を見ながら思い出す。韓国で通貨危機が起きた年、日本も拓銀や山一が破綻し政府が金融機関救済に兆円単位の公金投入を決めた。だから日本人は本作を他人事と笑えない。ただ映画は色気ゼロ、シャレっ気ゼロで比喩ではなく笑える場面もゼロ。劇場公開ならもう少し観客サービスしないと。ヒロインも高飛車なカタブツで魅力がないうえ、作戦不発にかかわらず投資顧問会社になって生きのびるのにも不満。教訓は「人民は弱し官吏は強し」か。日本も自民党がなお政権を続けている。
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映画評論家
真魚八重子
国家単位の経済問題を、シャープかつサスペンスフルに描いた硬派な作品。語り口は群像劇になっているため、国の中枢、一般的な投資家、町工場を営む庶民の異なる視点で語られるので飽きないし、難解な用語も流れでクリアできる。リーマン・ショックを中心にした「マネー・ショート」の抜群な面白さをモデルにしているような脚本の作り方だ。世間が金融危機の訪れに気づかない中、歯止めをかけようとする者と機に乗じて策略を巡らす者の知的攻防戦が、劇的に展開して痺れる。
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