オルジャスの白い馬の映画専門家レビュー一覧

オルジャスの白い馬

「怒り」の森山未來主演による日本・カザフスタン合作作品。大草原の小さな家に暮らす少年オルジャス。ある日、馬飼いの父親が市場に行ったきり帰らず、母親が警察に呼び出される。平穏だった日常が急展開を迎えるなか、1人の男・カイラートが家族を訪ねてくる。共演は『アイカ(原題)』で2018年カンヌ国際映画祭最優秀主演女優賞に輝いたサマル・イェスリャーモワ。監督は「さまよう小指」の竹葉リサと、第24回(2011)東京国際映画祭で上映された『春、一番最初に降る雨』のエルラン・ヌルムハンベトフ。
  • 映画評論家

    小野寺系

    カザフスタンの大地で西部劇「シェーン」を再現しているように見える作品。だがそれが様式美にまで昇華されているわけではなく、同様の構図が用意されたニコラス・ウィンディング・レフン監督の「ドライヴ」の洗練にも遠い。ある程度のバイオレンス描写はありつつも、現地と日本、監督二頭体制からくる遠慮が作品に影響を及ぼしている気がしてならない。母親役のサマル・イェスリャーモワの演技は圧倒的で、表情のみでも繊細な感情が手に取るように伝わってきた。

  • 映画評論家

    きさらぎ尚

    養父と実父の、二人の父を亡くす少年の話だが、ストーリーよりも画面に映るカザフスタンの風景、動物、人々に魅入られる。まず、遠くに山並みを望み、朝日を受ける馬の背中から湯気が立ち上る冒頭からして、自然とすべての生命の息づかいを撮り込んだ画面に情感を引っ張られる。もちろんストーリーがどうでもいいというわけではない。こうした美しい村で起こる惨劇を静かだが、きちんと伝える演出が、村の裏面を暴き出す。森山未來が演じるカザフスタン人の父親役は素晴らしい存在感。

  • 映画監督、脚本家

    城定秀夫

    森山未來がカザフスタン人役というのにはいささかたまげたが、なにより凄いのが精密な画作りで、美しく広大な風景の切り取り方はもとより、そこに置かれる人物、動物、果てはバスなどの無機物に至るまで、その動きも含めての構図が極限までこだわり抜かれているし、色彩の配置もこれ以上はないと思わせる仕事で、全てのカットでため息が漏れてしまうほどの素晴らしさだったが、穏やかな日常を唐突に襲う西部劇調の物語は小味は効いているものの、少し予定調和なのが惜しいと感じた。

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