ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯てへの映画専門家レビュー一覧

ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯てへ

中国新世代の若き鬼才ビー・ガン監督によるヒューマンドラマ。父の死をきっかけに、12年ぶりに故郷へ帰って来たルオ・ホンウ。そこでは、他界した幼馴染みを思い起こすと同時に、長い間、彼の心から離れることのなかったある女性のイメージが付き纏うのだった。出演は「ラスト、コーション」のタン・ウェイ、「背徳と貴婦人」のホアン・ジエ、「妻の愛、娘の時」のシルヴィア・チャン。本編の後半60分は、3D・ワンシークエンスショットという挑戦的な手法が用いられている。第19回(2018年)東京フィルメックスで学生審査員賞を受賞。
  • 映画評論家

    小野寺系

    話題の新鋭ビー・ガン監督による奇想の一作。とくに3Dワン・シークエンスショットなる試みは、いかにも虚仮威し風に思えるが、シャガールの絵画に見られる生身での空中飛行を主観ショットで描く、狂気じみた発想と異様な文学性が、そこにおそらくあるはずもない必然性を感じさせて、手品を見せられているよう。奇抜な場面が続くなかで、少年との卓球勝負という、オアシスのような笑いどころも用意される。この才能を、このまま野放しにした方がいいのかどうなのか、謎だ。

  • 映画評論家

    きさらぎ尚

    彷徨い交わるような現実と記憶と夢。これを独自のスタイルで映像化したビー・ガンという監督・脚本家を、相当ユニークな映像感覚の持ち主とみた。分けても後半部分の約60分をワンシークエンスショットで撮影したと聞いて見たが、カメラを回したカメラマンの大変さは想像を超える。おまけに画面がダークなことも手伝い、眼光紙背ならぬ、眼光「画」背の気合いでスクリーンを凝視。結果、B・D・パルマやW・カーウァイらを思い出すが、その誰とも似ていない煥発する才気を感じた。

  • 映画監督、脚本家

    城定秀夫

    前半のノワール調の演出はすこぶるキマっていて、惚れ惚れスクリーンを眺めていたら、なんだかストーリーの方はあまり理解できていない状態のまま噂の60分ワンカットパートに突入しており、そこからはトリップ状態に陥って気が付けばエンドロール。退屈はしなかったのだが、頭に残った物語を反芻しようにも?み所がなく、いうなれば夢やイリュージョンを見ている感覚の映像体験で、映画として面白いのかどうかまでもが判然としない。そもそも映画の面白さとは一体何なのでしょう?

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