ミッドサマーの映画専門家レビュー一覧

ミッドサマー

「ヘレディタリー/継承」のアリ・アスター監督による異色スリラー。家族を不慮の事故で失ったダニーは、恋人や友人ら5人でスウェーデンの奥地で開かれる90年に一度の祝祭を訪れる。太陽が沈まないその村は楽園のようだったが、次第に不穏な空気が漂い始める。出演は「ファイティング・ファミリー」のフローレンス・ピュー、「ビリーブ 未来への大逆転」のジャック・レイナー。
  • 非建築家、美術家、映画評論、ドラァグクイーン、アーティスト

    ヴィヴィアン佐藤

    前作「ヘレディタリー/継承」で彗星の如く出現したアリ・アスター。待望の新作だ。ふたつの異文化同士の差異から生ずる摩擦が、そのまま恐怖や不安という感情に変換される。それは前作も同様で、悪魔主義は悪魔主義者にとっては、もっとも安定した形式である。未体験の文化を受け入れ馴染むこと。上映時間を通してそのエントロピーの安定がなされる。そしてそこから脱落や抹消される者以外、選ばれた主役だけが生き残る。いわば理由なき選民思想で、日本のマンガに近い感覚か。

  • フリーライター

    藤木TDC

    怖かった「ヘレディタリー/継承」の監督による「ウィッカーマン」(73年)によく似た秘祭ホラー。舞台はスウェーデン辺境とされ、白夜の夏至祭をいかにも北欧っぽい天国的、妖精的イメージにこだわり細部まで描くが、どこまで資料調査やフィールドワークをしているか不明。創作なら類型的で偏見まじりの描写に同国の人は怒るかも。現代性を感じさせる家族の悲劇を物語の横軸におき、縦軸の秘祭クライマックスと統合を試みたと思われるラストは多様に解釈できるものの論議を呼びそう。

  • 映画評論家

    真魚八重子

    監督のA・アスターは長篇デビュー作「へレディタリー/継承」で、奥の手まで出し切ってしまったのか。本作も決して水準が低いわけではないが、前作で観た手法やラストの構造が焼き直しで使われていたり、基本のストーリーが「ウィッカーマン」すぎたりして新鮮味を感じない。アスターの個性は強烈にあるものの、冒頭での人間関係の歪みや痛々しくも繊細な脆さが持続しないのは、中心となるカルトの形式に囚われすぎゆえか。麻薬と純粋な恐怖の意外な相性の悪さも端々で感じる。

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