悪人伝の映画専門家レビュー一覧

悪人伝

「新感染 ファイナル・エクスプレス」のマ・ドンソク主演によるヴァイオレンス・アクション。ある夜、組織のボス、チャン・ドンスが何者かにめった刺しにされる。奇跡的に一命をとりとめた彼は、事件の捜査にあたるチョン刑事と共闘して犯人を追い詰めてゆく。共演は「ノーザン・リミット・ライン 南北海戦」のキム・ムヨル、「海にかかる霧」のユ・スンモク、「新しき世界」のキム・ユンソン。
  • 非建築家、美術家、映画評論、ドラァグクイーン、アーティスト

    ヴィヴィアン佐藤

    最近の韓国映画にしては冒頭からの空撮演出が90年代の日本のノワール風で、多少クリシェで幼稚な印象を受ける。はみ出し刑事と筋を通す任?ヤクザのコンビはヴァイオレンスエンタメとして最後まで振り切っている。脚本はさることながら、熱量や持久力、根底のマンパワーに感心。哲学派殺人鬼は「セブン」さながら人間の原罪を法廷で語る。殺人ドラマはどこまで犯人の動機が強いか。その必然性を逆算していくのだが、現代社会では親からの虐待が一番説得力があるのも不思議。

  • フリーライター

    藤木TDC

    ヤクザ・刑事・猟奇犯と近年の韓国映画の得意要素を絶妙にブレンド、残酷描写を一般客がドン引きしない濃さに調整した仕上がり。ゴリラ可愛いマ・ドンソクは直球ド真ん中の極道組長を演じると思いのほか善人っぽさが前に出る不満はあるものの、狙いは若いカップルのデートにも対応するエンタメノワールだろうし、暴力もマンガ的な「笑える恐さ」レベルにうまく抑えて後に引かない。終盤に至りライバル集団が一丸となり全力捜査する展開は日本のドラマ『下町ロケット』あたりの影響か?

  • 映画評論家

    真魚八重子

    ヤクザたちも刑事らも良い顔のオンパレードで、この手の韓国暴力映画が好きな人には無条件でオススメできる。マ・ドンソクは過剰な筋肉に目を奪われがちだが、頭が切れて善悪どちらに転ぶかわからないヤクザ役の、狂暴さと思慮深さを微妙な表情で使い分ける演技力が、複雑な物語を屋台骨となって支えている。苦境に追い込まれた、立場が相対するうえに信用に値しない男たちの駆け引きという主軸に加え、意外にも連続殺人鬼の追跡が大きな要素となってくる設定も新しくて面白い。

1 - 3件表示/全3件