今日もどこかで馬は生まれるの映画専門家レビュー一覧
今日もどこかで馬は生まれる
競走馬を引退したサラブレッドの“その後”を見つめるドキュメンンタリー。天寿を全うする前にその生涯を終えてゆく数多くの馬たち。競馬をこよなく愛するファンや馬主、調教師、生産者、馬関連ビジネスを展開する経営者を訪ね、人と馬が共生する道を模索する。監督・企画・編集は、映像ディレクターの平林健一。
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映画評論家
川口敦子
昔、好きだったマイケル・サラザンが出たダンスマラソン映画「ひとりぼっちの青春」。その原作が確か『彼らは廃馬を撃つ』だった、などと思わず勝手な懐かしさに浸り込んだ。観客に脇道にそれるそんな余裕を与えてくれる一作、押しつけがましさのない点がよさでもあり弱さでもあるかもしれない。関係者の意見を奇を衒わず、丹念に並べていく構成で、控えめな問題提起、情報提供の役割を清々しく全うする。その先、例えばJRA中枢部の意見もあったらなどともつい思った。
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編集者、ライター
佐野亨
時折、JRAのCMを目にしては「競馬のイメージも様変わりしたものだ」と気楽な感想を抱いていた者としては、あの人気者揃い踏みCMの裏に隠された問題を知らしめるこの映画の意義は認めたい。登場する「うまやもん」たちの表情も魅力的だ。だからこそ、ナレーションを全面的に導入して証言を数珠つなぎにするよりも、生きものとしての馬の美しさをじっくり見せてもらいたかった。そうすれば「馬が生まれる」ことの尊さがもっと身に迫って感じられたのではないかと思う。
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詩人、映画監督
福間健二
競走馬、走れなくなったらどうなるのか。どうなるのがいいのか。ファン、騎手、生産者、調教師、馬主、牧場経営者たちを訪ねて、それぞれの思いと、馬とともに生きる姿をカメラに収めている。対象が変わってもアプローチはほぼ同じ。インタビューでは似た構図の画が反復される。「こうすればいい」と結論を出せないこと。それをこの世の別な場面で起きていることにもつなぐ思考が見えない。平林監督は、馬の美しさ、健気さ、さびしさの奏でる「詩」にも興味があまりなかったようだ。
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