オリ・マキの人生で最も幸せな日の映画専門家レビュー一覧

オリ・マキの人生で最も幸せな日

1962年、世界タイトルマッチを控えて恋に落ちたプロボクサー、オリ・マキの実話を、16ミリフィルム、モノクロ撮影で映画化したフィンランド発のハートウォーミングなラブストーリー。第69回カンヌ国際映画祭ある視点部門でグランプリを受賞した。出演は「アンノウン・ソルジャー 英雄なき戦場」のヤルコ・ラハティ、歌手としても活躍するオーナ・アイロラ、「ボーダー 二つの世界」のエーロ・ミロノフ。監督のユホ・クオスマネンは、本作で長編デビュー。
  • ライター

    石村加奈

    フィンランド語のタイトルは「微笑む男」。監督の言葉を借りれば、フィンランド人にとって「微笑む男」とは異常者=かなり珍しい存在なのだとか。このタイトルの方がしっくりくる程度に意表をつかれた。描かれるのは、大事な世界タイトル戦を控えたボクサーの話ではなく、ボクシングをしているフィンランド人男性が、恋をして、婚約する、大変な愛の物語だから。実話に基づくお話らしく、過剰に煽りもせず、ドキュメンタリーのように淡々と描かれる愛の芽生えは、たしかに微笑ましい。

  • 映像ディレクター/映画監督

    佐々木誠

    映像素材の断片を一見荒削りに並べただけのような編集が好きなのだが、ちゃんと計算された荒削りじゃないと当然ただの「素材集」になる。62年が舞台の本作は16㎜カメラで撮られており、まるで当時の記録映像をあとから誰かが繋ぎ合わせたような錯覚をさせられ、冒頭からその編集センスの良さにやられた(そういえば主役である実在のボクサー、オリが記録映画の被写体になるエピソードも)。世紀の世界戦までの数週間の物語を、ただの「恋愛の記録」としてまとめているところが憎い。

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