キスカム! COME ON,KISS ME AGAIN!の映画専門家レビュー一覧

キスカム! COME ON,KISS ME AGAIN!

若手監督・松本花奈が贈るロマンティック・コメディ。内気な橋口海はある日、恋人のサヤにフラれた上、勤務先の化粧品会社から子会社への出向を命じられる。ところが、出向先は“キスによって恋人たちのよりを戻す恋愛コンサル”という奇妙な会社で……。出演は「サヨナラまでの30分」の葉山奨之、「アパレル・デザイナー」の堀田茜、「午前0時、キスしに来てよ」の八木アリサ。
  • 映画評論家

    川口敦子

    埠頭。海。波。ブルーのカーディガンの寂しげな面差しの娘。そんな情景だけを抜き出すとなかなか素敵だったりもする。あるいは「男勝りの美人カメラマン」役の人気女性誌モデル嬢の伸びやかな肢体と演技もそこだけ見ればちょっと魅力的だ。自分以外の存在を好きになるとはどういうことか――と上映前の挨拶で述懐した監督がロマンチック・コメディの衣の向こうでめざしたテーマも興味深いと思うのだが、全体像としては生煮えの感が否めない。恋人たちと共に映画も走って欲しい。

  • 編集者、ライター

    佐野亨

    おそらくはさまざまな経済的思惑が絡み合って出発したのであろう企画を、お膳立てのうえに胡坐をかかず、たくらみをもって良質のロマンティック・コメディに仕立てた松本花奈監督の手腕、みごとだ。オフィスやバー、人物が交差する街角といった空間のなかで情感の高まりを表現する演出の手つきは、評者が偏愛する80年代ハリウッド・ロマコメにも通じる。ダイアローグもいいな、と思ったら、脚本はウディ・アレンを敬愛し、古舘伊知郎のライブも手がけたリンリン(林賢一)。納得。

  • 詩人、映画監督

    福間健二

    葉山奨之の主人公も、彼が出向することになる会社「恋愛コンサル」も、結果オーライ的に憎めないところがある。設定と話、うまく作っているのだ。主張的なものを装うことなく余剰感もないことに好感をもった。ゴダールが撮らないと言ったキスの場面。当然たくさん出てくるが、どれも実にたいしたことない。やはり伝統がないのか。そうだとしても、本物のキスカム、本気のキスがドキュメンタリーで入らないのは惜しい。松本監督ならできたこと。チャンスを棒に振ったのはだれのせいか。

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