あなたの顔の映画専門家レビュー一覧

あなたの顔

    「愛情萬歳」でヴェネツィア国際映画祭金獅子賞を受賞、カンヌ、ベルリンの受賞歴を誇り、舞台やインスタレーションも手がけるツァイ・ミンリャン監督が、5年ぶりに発表したドキュメンタリー。13の顔を大写しし、顔に表れた各人の生きてきた時間を見つめる。長年ツァイ監督と組んできた俳優・監督のリー・カンションや、台北の市井の人々にカメラを向け、それぞれの顔を1人1カットずつ映し出していく。音楽を坂本龍一が担当。第75 回ヴェネツィア国際映画祭にてワールドプレミア。2019年台北電影節最優秀ドキュメンタリー賞・監督賞・音楽賞、2019年金馬奨最優秀ドキュメンタリー賞受賞。第19回東京フィルメックス特別招待作品。
    • 映画評論家

      小野寺系

      ドキュメンタリー映画というより、どちらかというと現代美術におけるビデオ・インスタレーションの形態に合いそうな内容で、席に座ってじっくり観る作品としては万人向けではないと思える。だが、そういった枠組みを壊していく目的も、試みの内にあるのだろう。最も近いと思えるのは、延々と尻を映し続けるといった、過激なコンセプトのオノ・ヨーコの実験作「ナンバー・4」(66)で、コンセプトの面白さの点ではツァイ・ミンリャンが遅れをとっているように思える。

    • 映画評論家

      きさらぎ尚

      生身の人間が固定されたカメラという機械と向かい合い、クローズアップで撮影されている。これだけでもかなり興味をそそられる。寄りもせず引きもしないで、ひたすら瞳の動きやまばたき(すうっと眠りに落ちる人もいたが)、シワの動きから肌理までを捉えたカメラは、効果音のような音楽の使い方と相まって、映される人物の来し方を想像させる。今更ながら、人間の顔がこんなにも面白いとは……。画面に順次映る13人の顔に魅入られながら、インスタレーションの会場にいる気分に。

    • 映画監督、脚本家

      城定秀夫

      ひたすら映されるジジババたちとにらめっこするだけの映画と思いきや、たまに喋る奴もいて、その話もパチンコで200箱出したぜウェーイとか、どうでもいい自慢話だし、襲いくる睡魔と闘っているこっちの気も知らず、ただ写されることに退屈して居眠りこいてる被写体のジイさんに「お前が寝るなー!」と叫びたくなったりもしたわけで、商業監督を引退した敬愛するツァイ・ミンリャン監督が今後この方向に突っ走らないよう切なる願いをこめて自身初の一つ星を謹んで進呈致します。

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